印税と年金で100万円を手にした大藪春彦賞作家が、滞納家賃を全額支払えなかった「納得の理由」【「鶯谷」第二十九話#1】
---------- ついに印税を手にした作家の赤松利市氏。溜まりに溜まった家賃をすべて支払うことができるのか。そして、残ったおカネの行方やいかに? ---------- 【写真】「その格好で読書...?」スペインの超有名女優クララ・ガレの「休日の姿」
意気揚々と伝えた
『あじろ』の印税が支払われた。 以前と比べるとかなり減額された額ではあったが、刊行部数が減っているのだから仕方ない。 偶数月に支払われる年金と合わせると、1,000,000円を超える額になった。 (これで滞納している団地の家賃も精算できる) 滞納額には金利がかかるので支払日によって変動する。 金額確認のために電話をした。 「本日付で滞納額を清算したいのですが、総額はいくらになるでしょう?」 告げられた金額は余裕で支払える金額だった。 「これで次回からは分割払いが可能なのですよね? 確か5万円の分割払いも可能だとある人から聞きましたが……」
作家の勘違い
ある人とは団地の敷地内で散髪屋を営む亭主だ。 亭主自身が団地住まいではないので、誰に聞いたとは言わなかった。 誤情報ではないかと警戒したのだ。 「ええ、分割払いも可能ですが……」 「では、今後しばらくは月々5万円の分割払いということにして頂けませんでしょうか?」 胸をなで下ろしながらいった。 「近々『風致の島』という作品も文庫化されます。それ以前に文芸誌に連載している『更地シリーズ』という作品の原稿料も入ってきます。さらに『下級国民A』というエッセイの文庫化も決まっています。他にも注文をお受けしている書下ろし長編がありますので、そうそう長くはお待たせせずに、通常のお支払いに戻せると存じます」 意気揚々と伝えた。 「なにか勘違いされておられませんか?」
理解できるが、したくない
「勘違い?」 「赤松さんは、すでに分割払いされていますよ」 「私が? 分割払いをしているんですか?」 相手がなにをいいたいのか理解できなかった。 「いいですか。滞納額の累積が3か月分を超えたら退去手続きが始まるんです」 「ええ、ですからそれを本日解消すると……」 いつもの動悸に襲われた。 (自分はとんでもない勘違いをしていたのではないだろうか? ) 「解消したとしても、です。その後の支払いが家賃分に満たなかった場合は、また家賃の滞納が始まるじゃないですか」 相手の言葉に頭が錯乱した。 いや、理解することを頭が拒否していた。 「いいですか――」 噛んで含めるようにいわれた。
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