印税と年金で100万円を手にした大藪春彦賞作家が、滞納家賃を全額支払えなかった「納得の理由」【「鶯谷」第二十九話#1】
動機ばかりが激しく
「分割払いが認められるのは、家賃の滞納分だけなんです。例えば赤松さんが言われるように、毎月5万円を支払っていたら、家賃の未払い分が蓄積するばかりなんです」 相手の言い分が理解できた。 それを認められないまま、動悸ばかりが激しくなった。 「ですから、延滞分を清算した翌月からも、月々の家賃は滞りなく期日までにお支払いくださいね」 私の心拍数が、電話回線を通じて伝わっているのかと思えるほど、憐みがこもった声でいわれた。 そのまま通話を終えて、私が振り込んだ金額は、延滞金額の累計が3か月分にならないように計算した金額だった。 (前にもあったな……) 思い出したのは『隅田川心中』が文庫化されて、その印税が振り込まれた時のことだった。 あの時点でも、延滞金は清算できたのだ。 しかしできなかった。
生活できなくなる
(どうせ風俗で散財したからでしょ? ) 読者諸氏のご指摘は間違っていない。 私は風俗で散財して、延滞金の累計額を清算できなかったのだ。 iPhoneの電卓で計算した。 とても団地の家賃の延滞分を精算できる金額ではなかった。 延滞金の累計が3か月を超えないよう、再びiPhoneで計算し、ほぼギリギリの金額を振り込んだ。 当たり前だろう。 振り込み後、手元に残る金で、次の収入があるまで生活しなくてはならないのだ。 それと―― 『はるの』ちゃんにも会いたいと考えた。 (そんな状況にあっても風俗かよッ! ) 呆れないで頂きたい。 もはや二人の関係は、客とキャストという単純な関係ではないのだ。 後編記事【滞納した家賃も払いきらずに大藪春彦賞作家は「ガチ恋」相手を予約した…そして「はるの」ちゃんから告げられた「最後のひと言」】に続きます。 赤松利市氏の最新作『あじろ』
赤松 利市(作家)
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