ヘッドライトはまるでチコちゃん! フィアット500Xの実質的な後継車、EVになった600eにモータージャーナリストの森口将之が試乗した!! 愛されキャラの素質あり
5ドア5人乗りという使い勝手の良いボディは魅力です!
SUV版のフィアット500として登場した500Xの後継車となる600e。弟の500eのキャラクターに近づけた外観は、なかなか愛らしい。ちなみに、EVはちょっとという人向けに、追ってハイブリッドも登場する予定だ。モータージャーナリストの森口将之がリポートする。 【写真24枚】ひと目見たら忘れられない、思わずクスッと笑みがこぼれるフィアット600eのデザインを詳細画像で見る ◆「チコちゃん」みたい 500eに続くフィアットのEV第2弾、600eが日本で発売された。イタリア車にくわしい人なら知っているかと思うが、フィアットが600という数字を車名に使うのはこれが初めてではなく、1955年に発表されたこのブランド初のリア・エンジン大衆車にルーツがある。 当時のイタリアではもっと小さくて経済的なクルマを求める声が上がり、ヌオーヴァ500が生まれ、こちらが世界的に親しまれた。逆に初代600はイタリア以外では知る人ぞ知る存在になったが、以前触れた印象では、コンパクトながら大人4人が乗れ、必要十分な走りを示す、バランスの取れたファミリーカーだった。 600eという車名は車格が500eよりひとクラス上ということも示しているが、同時に初代600に敬意を表した命名でもあると、発表会にイタリアから駆けつけたデザイナーがプレゼンテーションしていた。 全長×全幅×全高=4200×1780×1595mmで、現在販売しているフィアットでは、2ボックス5ドアのクロスオーバーであることを含めて、500Xに近い。 一方のスタイリングは、NHKのバラエティ番組のキャラクター「チコちゃん」を思わせる独特のヘッドライトをはじめ、500eに近い。ただし500eよりノーズが長くてフードは水平に近く、リア・ゲートにはやや膨らみがあるプロポーションは、初代600を意識した結果だそうだ。 インナーを含めて電気式ではない一般的な機構になったドア・ハンドルは、初代がそうだったファミリーユースを意識したのかもしれない。 それにしても、あとのページで紹介するジープ・アベンジャーとプラットフォームを共有し、500eに近いキャラクターを与えつつサイズ・アップしてドアも増やしながら、バランスの取れた姿になっているのは、さすがイタリアである。 EVらしさの演出は500eより一歩進んでいて、500eではアンダー・グリルに取り入れていた未来的なパターンを、アルミホイールやリア・コンビランプにも取り入れている。とりわけホイールのモダンな造形は個性的で、エンジン車との違いを効果的に表現していると思った。 ◆乗り心地はしっとり 運転操作は500eと同じで、スタートスイッチを押し、インパネ中央下に並んだボタン式のシフトセレクターでDレンジを選び、スロットル・ペダルを踏むとスタートする。前輪を駆動するモーターの最高出力は156ps、最大トルクは270Nm。車両重量は1580kgに達するが、加速に不満はない。ドライブモードはエコ/ノーマル/スポーツの3種類あるが、エコでも十分だ。それ以上に感心したのは、発進停止を含めたマナーの良さ。500eでの経験が生きていると感じた。 500eではドライブモードによって違っていた回生ブレーキのレベルは、シフトセレクターのDボタンを押してBにすることで調節する。ただしBを選んでも、それほど強い減速は得られなかった。 ドライブしながら感心したことのひとつに、車両感覚のつかみやすさがある。加減速や操舵など、クルマの動きが自然なためもあるが、個性的な見た目から想像するよりもずっと、サイズを把握しやすかった。これはファミリーカーとして大事だ。 乗り心地はしっとりしていて、フィアットとしてはかなり快適。フランス車を思わせるほどだった。ただし高速道路では、18インチのホイールとタイヤの重さが、路面の継ぎ目などで気になることもあった。 ハンドリングはEVということでフロントの重さがなく、重心が低くなったことの恩恵を感じる。ただし脚まわりがハードではないこともあって、500eのようなキビキした動きではなく、ここでもファミリーユースを意識していることが窺えた。 「でもウチには充電設備はないし、価格は500万円以上するし」という人には、すでに本国では用意されているマイルド・ハイブリッド仕様が来年追加予定というので、そちらを待つという手もある。 2つのパワートレインが選べるようになれば、5ドア5人乗りという使い勝手の良いボディや大きすぎないサイズなどから、500に匹敵する愛されキャラになるかもしれない。 文=森口将之 写真=望月浩彦 ■フィアット600e 駆動方式 前モーター前輪駆動 全長×全幅×全高 4200×1780×1595mm ホイールベース 2560mm トレッド(前/後) 1535/1525mm 車両重量(車検証記載前後軸重) 1580kg(870/710kg) モーター形式 交流同期モーター モーター最高出力 156ps/4070-7500rpm モーター最大トルク 270Nm/500-4060rpm 変速機 1段固定 定格電圧/電池総電力量 375V/54.06kWh 一充電走行距離(WLTC) 493km サスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式 ブレーキ 前/後 通気式ディスク/ディスク タイヤ 前後 215/55R18 99V 車両価格(税込) 585万円 (ENGINE2024年12月号)
ENGINE編集部
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