理想の未来は「自然林のよう」。妥当な競争と自分らしさ生かす調和的社会
妥当な範囲での競争は自然林に似ている
各人が生き生きと自分らしく、過当競争ではなく妥当な範囲での競争を繰り返し、みんなと調和的に生きる社会というのは、自然栽培や自然林に似ていると思います。 木村秋則さんの「奇跡のリンゴ」をご存知でしょうか(たとえば、『リンゴが教えてくれたこと』 (日経プレミアシリーズ 46) 新書 -2009年、木村秋則著 参照)。全く肥料を与えず自然な状態で行う農業です。例えばリンゴを栽培する場合、地面には雑草が生えている状態。農薬を使わないばかりか、有機肥料も使いません。単に自然のままにするのではなく雑草を刈るなど多少の手は加えるものの、多種類の植物や細菌が共生する状態で農業を行うのです。 木村さんは、自然に生えているリンゴの木を見たときにこの農法を思いついたと言います。自然の森の地面には落ち葉が堆積しています。落ち葉をかき分けてみると、土はふかふか軟らかく、湿っていて、ツーンと酸っぱいようないい匂いがします。これが、自然の状態です。たくさんの生物の共生。そこで育つリンゴは、多様性のバランスの中で生きています。 一方、一般的な農業では、農薬を使って、育てたい植物以外はいない状態を作ります。土からの養分が育てたい植物だけにいくように。極めて人工的です。 人工的なピラミッド組織のようです。合理的、効率重視、無駄の排除、多様性の抑制、利益最大化が目的。一方、最近流行りのホラクラシー組織(たとえば『社長も投票で決める会社をやってみた。』(WAVE出版,2018年))やティール組織(たとえば『ティール組織』(英治出版、2018年))では、階層構造を廃し、自然なネットワークを推奨し、それぞれの個性を生かし、各人が多様な中で幸せに働くことを重視します。第4回目(理想のない現実論は危険、現実のない理想も危険、でも理想は実現可能である)に述べた競争型社会と協創型社会の違いとも対応しています。 林業用の針葉樹林と自然の混合林の違いも似ています。スギやヒノキを一定間隔に植えた人工林と、多様な広葉樹が生えた自然林の違いも明らかです。人口の杉林の地面にはあまりいろいろな植物は生えていません。下草を刈るからでもあるでしょう。 一方の、自然林は、前にも述べたように、落ち葉が堆積し、その下にはいい匂いのする湿って軟らかい地面があります。多様な広葉樹が生えていて、春には新緑、秋には紅葉、冬には木の枝のシルエットが美しいです。人工林と自然林では、明らかに生物種の数が違います。