センバツ高校野球 北海、意地の1点 伝統の堅守、観客沸く /北海道
第96回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第5日の22日、昨秋の道大会王者の北海は1回戦で優勝候補の大阪桐蔭(大阪)と対戦し、1―7で敗れた。エース格の松田収司(2年)ら投手陣が計11与四球と本来の力を出せず、打線も1得点に終わった。それでも、守備は無失策と持ち前の堅守を発揮し、地元の大阪桐蔭ファンで埋まった観客席を沸かせる好プレーも再三披露。選手たちは夏に再び戻ってくることを誓い、甲子園を後にした。【後藤佳怜、林帆南】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 春4回の優勝を誇る全国屈指の強豪・大阪桐蔭といきなりの大一番。北の王者はいつもの姿ではなかった。 先発の松田は「(試合前の)ブルペンまでは感覚は良かった」というが、気持ちが空回りしたのか、本来の球威も制球も見られない。一、二回のピンチこそしのいだが、三回は3安打に3四球などが絡み4失点。「今までで一番だめだった」と肩を落とした。 新基準の低反発バットを一早く導入してきた打線も、なかなか援護ができない。四回に先頭の谷川凌駕(3年)、金沢光流(同)、大石広那(同)の3連打で相手先発を攻めたが、得点は敵失による1点のみ。相手の継投に反撃をかわされた。 それでも、昨夏の甲子園16強を経験した3年生を中心に「北海らしさ」も発揮した。 三回2死満塁のピンチでチームを救ったのは中堅手の片岡誠亮(同)。高く上がった打球が浜風に押し戻されると、倒れ込みながら右手を伸ばす。土の上でノックを受けられたのは大会までの約1カ月間と、雪国ならではのブランクがあったが、「目で感じたままに動けば間に合う」と最後は転がりながら白球をグラブに収めた。 右翼手の宮下温人(同)も、的確な判断で守備位置を変えながら、鋭い打球を再三好捕した。昨秋は公式戦8試合で計8失策とほころびを見せたが、この日は無失策。伝統の堅守は健在だった。 守備での手応えを感じつつも、投打に全国の壁の高さを痛感した春。「主砲になりたい」と打撃を磨き、4番を任された大石は「チャンスメークしきれず、情けない」と淡々と顧みたあと、ぽつりとつぶやいた。「それでも、この場所がいい」。昨夏に続きまたしてもお預けとなった甲子園初優勝という夢に向かい、再び歩み始める。 ◇別海選手らも応援 ○…北海のアルプス席には20日の1回戦で創志学園(岡山)に敗れた別海の選手らも駆けつけ、プレーを見守った。今大会の宿泊先が同じだったことから仲が深まった両校。別海の主将・中道航太郎(3年)は22日朝に甲子園に向かう北海の主将・金沢光流(同)に「頑張れ」と声を掛けたといい、北海が1点を入れるとチームメートと喜んだ。四回終了後に帰路に就いたため最後まで観戦はできなかったが、別海の島影隆啓監督は「精いっぱいプレーしていた」とたたえた。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇「悔しい」不完全燃焼 北海 幌村魅影(みかげ)遊撃手(3年) 不動の遊撃手は聖地でも完璧な守備を披露した。四回裏1死満塁、谷川凌駕(3年)とのあうんの呼吸で併殺を完成させ、五回も軽快にゴロを処理。「こんな野手がいるんだぞ、とアピールしたかった」。ただ、2度目の甲子園はまたしても不完全燃焼に終わり「悔しい」と唇をかんだ。 中学までは主に捕手。入学後は1年春の道大会から背番号6を背負い続けたが、伝統校の重圧の中で何度も試練に見舞われてきた。「人生で一番悔しかった」のは1年秋の道大会決勝。自らの悪送球から逆転負けし、ベンチの壁に額を押しつけて号泣した。「一球の重要性を何も理解できていなかった」。今北孝晟・前主将と毎日居残りで守備を鍛え、肘を柔らかく使う丁寧な送球を身につけた。 昨夏の甲子園では大会中に練習で右手中指を骨折。「(先発で)出られます」と平川敦監督に直談判するも残り2試合は途中出場に終わった。 それだけに、大きな思い入れがあった今大会。守備で実力を発揮する一方、「慎重になりすぎた」という打席では4打数無安打と精彩を欠いた。「またここで野球をするために、あと半年に全てを懸ける」。北海の堅守を支える大黒柱の視線はもう、夏に向いている。【後藤佳怜】