災害関連死の要因にも…断水長引く大規模災害下の『命の水』名古屋で20年かけ整備中の“しなる水道管”とは
ほかにも、飲料水を優先して歯磨きが十分にできないことで、口の中で細菌が増加し、肺の中に入り込み誤嚥性肺炎を起こす恐れなど、水不足がもたらす影響は数多くある。 奥村教授: 「こういった形で命を落とされる方っていうのもこれまでも確認されているし、今回も注意が必要だと思います」
■震度7でも“折れない”配水管 巨大地震を見据えた名古屋市の取り組み
災害時に「命をつなぐ水」をどう確保するのか、名古屋市は断水を予防するための対策を進めている。 各家庭まで水を運び入れる「配水管」は、街中の地下に、網目のように張り巡らされている。地震による揺れで破損しやすいのが、配水管どうしの『つなぎ目』だ。1975年ごろの配水管は、この部分に“遊び”がなく、固定されたタイプだったという。
名古屋市上下水道局の諏訪俊介さん: 「だんだん変遷がありまして、いま一番新しいのが『GX形継手』というものになります。爪がありまして、ちょっと余裕シロがあります。これがですね、地盤の揺れに追従するような形で動くことができるというような構造になっています」
この「GX形継手」が地震に強い理由は、つなぎ目にある“ちょっとしたすき間”だという。
つなぎ目は完全に固定された状態ではなく、あえて“動く”ようになっていた。
クレーンで吊り上げても、つなぎ目が折れることはない。地震によって地面が大きく変動しても破損することなく、過去に震度7を観測した地震でも被害は確認されていない。 名古屋市では、こうした配水管の切り替えを20年かけて進めている。学校や病院など、災害時の拠点となる重要施設に水を運ぶ配水管は、2024年度中にすべて耐震化が終わる見通しだ。 諏訪さん: 「古くから“東海地震”ですとか、そういった地震の被害が想定されておりました。特に名古屋市の西部は軟弱地盤と言いますか、液状化が危惧されるという地域でもございますので。耐震化ということに取り組み始めてきた」 2022年度の厚生労働省の調査によると、主要な水道管の耐震化率は、全国平均が41.2%に対し、名古屋市は「79.8%」と高い水準だ。消火栓でも同じ配水管を流れる水を使っているため、地震によって火災が発生した際にも、消火用の水の確保ができるという。