省みる遺言 「認知していない我が子に遺産を渡したい」
皆様、こんにちは。「ラストメッセージ」というデジタル遺言サービスを提供している山村幸広です。私はデジタル遺言サービスを通じて、さまざまな相続の形を見てきました。中には「もっとうまくできたのでは」というケースもあり、日々、「正しい遺言の残し方」を研究しています。 「いざ」というときは、誰にでも訪れます。そんなときでも慌てず、大切なご家族やお子様などに迷惑がかからないようにするには、どうすればいいか。本連載では事例を基に、私なりのアドバイスを提示できたらと思っています。 さて、今回紹介する事例は、「認知していない我が子にお金を残したい」です。どうも家族には秘密にしている隠し子がいるようですね。さて、どういうことでしょうか。さっそく、見ていきましょう。 ※紹介する事例は、事実を基にしていますが、登場する人物、家族構成ともに実在しません。 ケース2 認知していない子供(隠し子)に遺産を渡したい 遺言者 夫:佐々木亮介さん(70歳) 相続人 妻:貞子さん(65歳)、長男:正さん(37歳) 認知していない子 須藤義明さん(25歳) 財産 現金約8000万円(すべて銀行預金)/持ち家(時価約4000万円) 佐々木亮介さん(70歳)は、一流大学を卒業後、大手ゼネコンに入社。亮介さんは人見知りしない明るい性格で、若い頃から自然に周囲に人が集まってくるような人気者でした。入社後5年で現在の妻・貞子さんと結婚。30代で長男の正さんも生まれ、はたから見るととても幸せそうな家族に見えます。 けれどもただ1つ、亮介さんは家族にずっと秘密にしていることがありました。実は亮介さんには隠し子がいたのです。 ●仕事で追い詰められていたときに出会う 40代で管理職になった頃、上司と部下の板挟みで亮介さんは精神的に参ることが多くなっていました。ストレス解消にと、繁華街に足を運んでは、お酒を飲んで帰ることが多くなっていました。そんなとき亮介さんは、バーカウンターの隣の席に座った須藤愛理さん(当時25歳)と出会います。 愛理さんは若いながらも落ち着いた雰囲気を持つ、すてきな女性でした。趣味はお酒と読書。亮介さんは一目で彼女を気に入り、くだらない冗談を言いつつ彼女を笑わせました。その日から意気投合。約束をしなくても月に数回、バーで会うようになりました。 会う回数が増え、亮介さんが仕事の悩みも打ち明けるようになった頃、亮介さんと愛理さんは、互いに「不倫」という言葉がちらつきつつも恋に落ちてしまいます。2人の感情はもう止められなくなりました。 そんな不倫関係が3年続いたある日、愛理さんの妊娠が発覚します。彼女は子供を産む決意を固めていて、亮介さんも彼女を心から愛していたため、それを了承しました。ただ亮介さんは、不倫をしていたことも、子供ができたことも、家族に告げることができないでいました。