「栗きんとん」に隠された秘密。日本の銘菓は地方によってこんなにも違いがあった!
秋の味覚のひとつである“栗”。 実は日本で栗を食べられるようになったのは縄文時代からなんだとか。古くから日本人に親しまれてきた栗は、日本の食文化にもさまざまな影響を及ぼしています。そのひとつが 和菓子“栗きんとん”です。 今回は年間約2,000個以上を食べ歩き、Twitterで本当に美味しい全国の和菓子を配信している高島屋の和菓子バイヤー畑主税さんに取材。地方で異なる栗きんとんについて教えてもらいました。
畑主税(髙島屋MD本部・和菓子バイヤー)
バレンタイン生まれ。高島屋全店と47都道府県の和菓子屋さん担当バイヤー。日々、全国各地の和菓子を開拓中。苦手なものは飛行機。好きなものは日本映画とドラマ、昭和歌謡。好物はたらこ、メロン。 野球は横浜ベイスターズファン。自著に「ニッポン全国和菓子の食べある記」がある。
栗きんとんはいつごろ誕生したのでしょうか
栗きんとんと思わしき食べ物は室町、江戸時代ごろにはあったようです。発祥は岐阜県・東濃地方と言われています。中津川発祥説や恵那、八百津など諸説ありますが、今回は中津川の栗きんとんを取り上げたいと思います。 山の多い地域では古くから恵那栗がよく取れたため、栗きんとんは保存用に作っていたんですね。その当時は庶民向けの食べ物で、高価な砂糖は使っていなかったのではないでしょうか。 岐阜県の栗きんとんは炊いた栗に砂糖を加え、“茶巾”と呼ばれる茶道用の布でくるりと包み、絞って形を整えます。そのため、岐阜県では巾着のような形をしているんです。
“栗きんとん”を味わうのにおすすめの店はありますか
中津川市で江戸時代から続く老舗和菓子店「すや」の栗きんとんはぜひ食べていただきたい。 昔ながらの味と伝統を守り、厳選した国産栗と砂糖のみで作っています。材料がシンプルな分、栗本来のほくほくとした味わいを楽しめる。素朴で懐かしい味わいは秋の風物詩です。木々が色づくと僕は「すや」の栗きんとんを頼まなきゃとなります。 販売期間:9月~1月頃
地方によって“栗きんとん”に違いはありますか
栗きんとんの面白いところは作り方や呼び方に地域柄がでるところです。京都では上生菓子として親しまれています。 上生菓子とは生菓子の中でも上等なものと言われ、和菓子職人が熟練の技術を駆使して作る、四季の移ろいや花鳥風月を表現したお菓子のこと。 上生菓子の製法で、篩(ふるい)のような網目のある道具に餡子を通してそぼろ状にし、芯となる餡子にこのそぼろを添えつけていくことを “きんとん”と呼びます。京都では、これを栗あんで仕上げる栗きんとんが秋になると顔を見せるわけです。