最下位に沈んだ西武、強くなるためのヒントはある 野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志
プロ野球のペナントレースが大詰めを迎えている。セ・リーグは熾烈（しれつ）な優勝争い、パ・リーグもソフトバンクに早々と優勝マジックが点灯したものの、日本ハムの健闘もあった。 そうした中、早々に置いてけぼりを食らったのが、古巣の西武であった。 西武といえば、前身も含めたリーグ優勝は実に23回を数え、13度の日本一に輝いた名門球団である。だが、球団史上最速の39試合目で自力優勝の可能性が消滅。5月26日には松井稼頭央（かずお）監督の休養が発表され、渡辺久信ゼネラルマネジャー（GM）が監督代行兼任の形で引き継いだ。「こうなったら他の人には頼めない。僕がやるしかない」と話していた渡辺監督代行。その言葉には、泥をかぶる覚悟がにじみ出ていた。 ただ、チームは沈む一方だった。9月10日には球団最速での最下位が確定。翌日には、球団ワーストに並ぶ84敗に達し、負の記録を更新し続けている。 私にとって、西武の野球といえば、広岡達朗監督に他ならない。監督最終年（1985年）に、私は中日から移籍。たった1年だけだったが、野球人としての根幹を築いてくれた。 「自主トレで100メートル走を100本やらされた。明日は半分にしてやるというので喜んだら、翌日は200メートル走を50本だった」。当時ルーキーだった大久保博元がよく話しているエピソードだが、本当の話である。 チーム内競争も激しかった。春季キャンプは初日からレギュラー陣の体もほぼ出来上がり、紅白戦も真剣勝負で死球も当たり前。調整ではなく、公式戦の感覚だった。「何くそ」の思いがなければ、こなせなかった練習だろう。こうすれば確かに強いチームができると実感した1年だった。 今は広岡監督時代と同じようにはできないだろう。ただ、強かったのには必ず見習うべきヒントがあるはずだ。過去のやり方を具体的にひもとき、再確認することで、自分たちに足りなかったものも見えてくるだろう。 そして、まずはコミュニケーション。指導者たちが選手の意見に耳を傾けながら「確かに、そっちの方がいいな」と思ってもらえる話し合いを進めていくことが重要だ。今季は最下位に終わった西武だが、強くなるヒントは山ほどある。来季に向けてこれだけ希望のある球団はないと思っている。（野球評論家）
