米大統領選、トランプ氏勝利なら円安・株高-16年の再現には疑問
トランプ関税
トランプ氏は中国からの輸入品に60%の関税を課し、それ以外の国には一律10-20%をかける考えを示している。対中関税は既に停滞している中国景気のさらなる下押し要因となりかねず、日本にとって最大の輸出相手国である中国の景気減速が日本企業に与える影響は無視できない。
中国以外にも関税を課し、各国が報復関税に踏み切れば世界景気への影響は計り知れず、海外展開を加速する日本の自動車や電機、機械企業は大きな打撃を被ることになる。独アリアンツ・グローバル・インベスターズのポートフォリオマネジャー、ステファン・リットナー氏は「日本のアセットにとっては関税が重大なリスク」と語る。
UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、「トランプ関税」の発動リスクが高まった場合に日本株への深刻な影響を警戒する一人。18年にトランプ氏の対中関税実施で米中貿易摩擦が激化した際、「中国へのエクスポージャーに関係なく、ほぼ全ての日本株が売られた」と同氏は指摘する。実際、同年に東証33業種は電気・ガスを除く32業種が下げた。
事前の織り込み
そもそも、トランプ氏の勝利で株高が起きても長続きしないとの見方もある。トランプ氏勝利が市場関係者にとって想定外だった16年とは異なり、民主党候補がバイデン大統領からハリス氏に代わる前からトランプ氏優勢のシナリオは徐々に相場で消化されてきたためだ。
16年の大統領選直後、アジア市場ではトランプ氏の貿易政策への懸念や政策全般への不透明感から株価は一時急落。リスク回避による円買いも進んだが、すぐに同氏の減税や規制緩和への期待感から相場は反転し、大幅な株高とドル高・円安、長期金利の上昇をもたらした。
ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの駱正彦シニアストラテジストは、足元では米長期金利が約60-70ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)既に上昇していると指摘。16年の選挙後の70-80bp程度の上昇と比べ「かなり前倒しでトランプトレードが行われた」可能性があり、トランプ氏が勝利しても株高・円安は短期的な動きにとどまると読む。