【湘南】鈴木淳之介不在の福岡戦で見えたビルドアップの弱点。左右のストッパーは替えが効かない
層の薄さは早急に改善したい
8月7日、湘南ベルマーレはJ1第25節でアビスパ福岡とホームで対戦し、1-1で引き分けた。 【動画】鈴木章斗が福岡戦で21試合ぶりのゴール! 福岡戦は、前節まで3-5-2の左ストッパーで攻撃のキーマンにもなっていたMF登録の鈴木淳之介が累積警告で出場停止に。代役を務めたのは、守備の安定感が売りの大野和成だった。 鈴木淳が3バックの左に入ったゲームでは、右ストッパーの髙橋直也とともに積極果敢な持ち運びとパスで流動的なビルドアップを披露。ボール保持率を高めながら、敵陣に攻め込んだ。 ただし、福岡戦ではポゼッション時に左サイドで行き詰まり、ボールを奪われたり、長い球を蹴らされるシーンが散見。ストッパーでタメを作れなければ、ウイングバックの位置取りが低くなり、攻撃回数も減少する。大野の足もとの技術に問題があるとは言わないが、やはり鈴木淳との差は明らかだった。 また、左サイドが機能しなかった影響は、右にも出た。髙橋や右ウイングバックの鈴木雄斗、右のサイドボランチ(インサイドハーフ)の池田昌生は普段通りに安定感のあるプレーを発揮。だが、相手に左サイドのビルドアップを警戒されなくなると、右側に人を寄せられて、パスを封じられる場面が増えた。 以前のハイプレスとショートカウンターを強みとしたスタイルから、ポゼッションサッカーに移行している今季の湘南。ビルドアップが特長になりつつあるが、3バックの両脇が相手を引きつけてからパスを出す、という構造上、髙橋と鈴木淳の替えは効かない。福岡戦は、その事実が明白になった一戦だったと言えるだろう。 では、福岡戦で見えた課題を、今後どう解決していくのか。 ひとつは新戦力の獲得が挙げられるだろう。ただこれは、経営面や市場など、現場以外の要因に影響する部分もある。 現場で対応できそうな解決策としては、髙橋や鈴木淳が離脱した際の“プランB”を用意しておくことだ。福岡戦は大野に鈴木淳と同等の攻撃面の貢献度を求めたため、物足りなさがあった。大野に上質な縦パスやフィード、ドライブ(持ち運び)を要求するのではなく、左ウイングバックやサイドボランチ、アンカーのサポートを手厚くして、右とは違う形の仕掛けを作っておけば、緊急事態にも対応できるはずだ。 もうひとつは、選手のコンバートか若手の起用だ。そもそも、鈴木淳はサイドボランチやアンカーを主戦場としていた。山口智監督が次なる手を打ち、他のポジションで出番を得られていない、CBとしての適性のある選手を見つけて課題を解決するという考えもある。 現有戦力で面白い存在はいる。20歳の松村晟怜は左足のキックに定評のあるCBで、身長も182センチとポテンシャル十分。帝京長岡高校時代にボランチの経験もあるため、ビルドアップの順応にも期待できそうだ。フィジカルを強化できれば、スタメン争いに食い込む可能性もあるだろう。 シーズンは残り13試合。累積警告だけでなく、怪我やコンディション不良による離脱も考えられるため、福岡戦で見えた両ストッパーの層の薄さは早急に改善したいところだ。 取材・文●岩澤凪冴(サッカーダイジェスト編集部)