代理人・武藤敬司が語る、猪木VSムタ戦“毒霧”秘話「猪木さん、流血したらヤバい体調だった」
A猪木との最後の遭遇
「その頃、俺、年に2回、『マスターズ』って大会をやっていてさ。本当は2020年の8月の大会に猪木さんを呼ぼうとしてたんだけど、早めに呼んだほうがいいってことになって、2月の『マスターズ』に呼んだんだよ。そこまで俺、猪木さんと15年とかそのくらいは疎遠にしていてさ。だけどその時は猪木さんがよくいるホテルオークラに行って、『会長、お願いします』って言ったら、すぐにOKをもらって」 そう話した武藤は、「だけどその後の1時間くらいは『プラスチックはこうやって消えるんだ』とかって話をずーっと聞かされたよ」と猪木にありがちなエピソードを紹介した。 それでも猪木が登場した『マスターズ』は猪木のデビュー60周年メモリアルとして、予定通り2020年2月28日に後楽園ホールで開催された。 「発表したらすぐにソールドアウトになったんだよ。だけど緊急事態宣言ではないんだけど、その時に小池百合子都知事が『コロナなので外出は控えてくれ』って発表したら、500枚のキャンセルが来たの。それでも大会自体はやって。猪木さんも来てくれたんだけど、猪木さんが亡くなった時に、その時の『マスターズ』の時に、みんなで『1、2、3、ダー!』をやっているところの写真がメディアの至るところで使われてましたよ」 どうやら武藤は、そこが猪木との最後の遭遇になってしまったようだ。 そんな武藤に「猪木さんにこれを言っとけばよかったな」と思うことはありますか? と聞くと、「別にないよ。お疲れ様でしたってことかな」と答えた後に、「これもまた若手の頃の話だけど……」と以下の話を披露した。 「これもまだデビューする前ね。その時にやっぱり道場にいたら、猪木さんが練習しに来たんですよ。その時はタクシーかなんかで来られて。練習をして、帰るってことになってタクシーに乗るって話でさ。道場にタクシーが着いた時に、『武藤、ちょっと1万円貸してくれ』って貸したけど、いまだに返してもらってないことかな(笑)」 それが本当だとすると、かなりのいい利子がついているが、この話は猪木から、貸した1万円を返してもらえなかったからこそ、こうしてネタ的に語れる話になっている。もしかしたらそれを見越して猪木があえてそうしたとは思えないが、いずれにしろ、「最近は物忘れがヒドい」と嘆く武藤が、この話を懐かしそうに話し、かつそうやって猪木を忘れずにいることがすべてを物語っている気がした。 (敬称略)
“Show”大谷泰顕