首謀者が逮捕されても、「地面師詐欺」事件の全貌解明とはならず…犯行グループの”半分以上”が「お咎めなし」だった驚きの理由
ようやく動き出した警視庁
事件には、大物地面師の内田マイクやその仲間、司法書士の亀野や振込先となったセキュファンドなど、10人前後の犯行グループが見え隠れしてきた。にもかかわらず、逮捕されたのは4人だけであり、そのうち起訴されたのは北田と松田だけなのである。 その他、明らかに一味だと思われる者については、たとえば口座を貸しただけだとか、自分自身も騙されたとか、あるいは他の事件で逮捕されているから、という理由でお咎めなしになっている。 北田とともに地面師グループのボスとされる内田は、この世田谷の5億円詐取事件でも黒幕の一人と目されてきた。奇しくも事件の本格捜査が始まった17年12月、浜田山の駐車場所有者のなりすまし事件における最高裁への上告が棄却され、内田に対する懲役6年の刑が確定する。東京高検への出頭命令が出たとたん、本人はそこから行方をくらまし、逃走した。それはまさに世田谷事件における摘発を恐れたからにほかならない。 警視庁は、遅ればせながら津波の世田谷5億円詐取事件で内田の逮捕状を裁判所に請求した。行方をくらましてきた内田は観念し、18年に入って出頭した。が、それも計算ずくだったのかもしれない。世田谷事件については、あくまで北田が考えたことだと言い張り、自らの関与についてはいっさい口をつぐんだ。 逮捕された内田は、そのあげくまたしても検察が不起訴処分にしてしまう。警視庁にしてみたら、これだけ多くの地面師事件を首謀してきながら、内田を罪に問えたのは浜田山の駐車場事件の懲役6年だけということになる。このままでは数年後にまたカムバックする。 そうして警視庁は積水ハウス事件における内田の関与を洗い出そうと躍起になる。 『「2億4000万を騙し取る」も有罪にできず…地面師グループの「緻密な計画」を暴くべく奮闘する“警視庁捜査2課”の「苦悩」』へ続く
森 功(ジャーナリスト)