ニュージーランドが日本産カメムシ上陸にNo 日本から旅立った外来生物たち
19世紀、江戸の鎖国時代に長崎の出島に来日して博物学的研究を行ったオランダ人の植物学者フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトが長崎県から欧州に持ち込んだイタドリが、今では英国で手に追えない外来雑草となっています。イタドリは地下茎で繁殖し、アスファルトやレンガさえも突き破って伸長し、建造物や道路、防波堤、下水道など社会インフラに深刻な被害が生じています。 英国政府は、この植物を根絶するためには15億ポンド(約2900億円)のコストがかかると試算しており、対策に頭を痛めています。2010年3月、英国政府はイタドリの駆除のために、天敵の「イタドリマダラキジラミ」を日本から輸入することを決めましたが、その後、その防除効果についてはまだ明らかにされていません。 日本では食用として重宝されるワカメも海外では、大変迷惑な外来生物として問題になっています。ワカメはもともと日本、朝鮮半島の近海に生息する海藻ですが、世界自然保護連合IUCNによれば、米国、フランス、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、黒海、地中海など世界中の海域で繁殖が確認されています。これだけ広くワカメが分布を拡大したのは、タンカーのバラスト水が原因だと言われています。 バラスト水とは、タンカーなどの貨物船が積荷を降ろした後に、帰路で船を安定させるため重りとして船内に取り込む海水のことを指します。日本は資源輸入大国として様々な物資を海外から輸入している分、バラスト水の輸出大国にもなっているのです。日本近海でタンカーに取り込まれた海水の中にワカメの胞子が紛れ込み、日本から世界中の海へと広がりました。 侵入したエリアにおいてワカメがカキや、ホタテ、ムール貝、イセエビなどの養殖場で繁茂してこれら魚介類の成長を阻害したり、漁業用の機械を詰まらせてしまったりするなど、水産業に重大な影響が生じています。 2010年にフランスの研究グループが日本人の腸内には海藻の多糖類を分解する酵素をもつ細菌が住んでいるけれど、欧米人の腸内には存在しない、という研究成果をネイチャーに掲載して話題になりました。この研究結果から欧米人はワカメを食べると消化不良を起こすため、食べるに食べられずワカメの繁殖が抑えられない、という話もよく耳にしましたが、実際には加熱すれば欧米人でも問題なく食べられます。欧米においても海藻を調理して食べるという食文化が根づけば、外来ワカメも有効活用できるものと期待はされますが……。