Chip Tanakaが語る「解き放たれた」最新作、レゲエからの影響、ピラティス、能や日舞への強い興味
自分が狙う音に追い込んでいくミキサーとかエンジニアのラフな姿勢もレゲエで学んだ
―レゲエの話ではないですが、音楽の揺れの部分やグルーヴも大切にされていますよね。 Chip Tanaka:はい、そうですね、難しいけれど大事に思っています。 ―楽器も元々色々やってらっしゃったんですか? Chip Tanaka:ギターとドラムとピアノぐらいかな。生演奏するわけじゃないんですけど、生演奏するのもありかなと思ったりもします。あと、レゲエだけのアルバムを作るのもありかなと、ずっと思っているんですよね。 ―レゲエしか聴いていなかった時期もあったと話していますもんね。 Chip Tanaka:僕は日本人なので、言葉を音として捉えてた傾向が強かったと思います。当時聴いてたレゲエの歌詞は、現代だと放送禁止用語だらけ。けれど当時、音も歌詞も含め純粋にエネルギーとして捉えていたと思うんです。音数が少なくてシンプル。あと日本でやったら、音が歪んでいるとか、スピーカーが壊れる、みたいな遠慮がちな音作りも、そういうことは気にせず、ガンガン自分が狙う音に追い込んでいくミキサーとかエンジニアのラフな姿勢もレゲエで学んだ気がします。あとはドラムとベースだけで全体を運んでいく部分。自分の楽曲の構成に大きく影響与えています。 ―レゲエの影響は、それくらい楽曲の中に染み込んでいる。 Chip Tanaka:レゲエをそのままやっているわけじゃないですけど、20代なんかほとんど別の音楽を聞かなかったから。そのぐらいレゲエに傾倒していたんですよね。 ―コンピューター音楽は理論整然としているイメージがあるので、そこと、ある種の雑さが並行しているのは興味深いなと思います。 Chip Tanaka:僕は音楽を打ち込む時に気にしていることがあって、「人は何を聴いているか?」という事なんですけど、普通に考えると「音楽」って答えになるけど、自分は「変化」だと思ってるんですね。「違和感」とも言える。例えば普通、音符はテンポからずれるとまずいって判断になるけれど、自分はあえて微妙にズラす部分を作ったりします。音程もそんな風に捉えています。DJも2つの曲を混ぜる場合、PCに任せず手動でやると微妙にテンポがあったりずれたりするんですけど、そういう部分にこそ音楽の魅力を感じます。 ―Tanakaさんが、ライブをするときに心がけてることはどんな部分でしょう? Chip Tanaka:ライブをするときは、もっと進化したいなぁと思っています(笑)。自分に言い聞かせてる部分もあったりします。いつもアテンドしてもらっている人に、「Tanakaさん、そこまで動かなくても」とか言われたりするけど、音だけやなくて盛り上げる部分はあるはずだから、そういうことも意識するし、それはいつも課題を持ってやっていますね。 ―ライブの中で色々試みてきた最新のミックスが今作には収録されているわけですね。後半4曲はTanakaさんがライブの中で定番としてやられている楽曲なんですか? Chip Tanaka:「Pacific」は、最近いつも後半に持ってくる曲ですね。「Calm Sea」はとても好きな曲なんですがライブではあまりやってないですね。キックドラム、トントントン、ドチドチドチドチって音には、みんなぴょんぴょん乗ってくれるけれど、ゆっくりなリズムだしお客さんが動けない(笑)。レゲエを普段聞かない人が多いから、動けないのかなぁ。とはいえ「Calm Sea」は自分の曲の中で1番再生回数多いんですよね。個人的にはとても嬉しい反応です。 ―すごく気持ちいい曲ですよね。 Chip Tanaka:ありがとうございます! でも、「Pulse Ride」みたいな曲の方が、メロもわかりやすいしライブでは動きがいい。「Pacific」「Fennec」はチップチューン的な音が中心で鳴っていてわかりやすいので、みんなライブでは楽しんでくれます。 ―「Fennec」もライブでプレイすることはありますか? Chip Tanaka: これまではあまりやってなかったけど、次のライブでちゃんとやろうと思っています。要するに、どの曲でも曲の前後にどの曲を持ってくるか?で印象変わるし、ライブの音源考える時はどんな曲をどうつなげるか? そこを考えトライアンドエラーしている時が一番楽しいです。DJはステージ本番で即興でやるんだろうけど、自分は手持ちの曲数に限りがあるので、ある程度自宅で当たりをつけ準備していきます。