企業の想定為替レートは平均140円88銭
日本銀行は2024年3月19日にマイナス金利の解除およびYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の撤廃などを決定した。17年ぶりの政策金利の引き上げとなったが、FRB(米連邦準備制度理事会)による金利引き下げの見通しが後退し、日米金利差の縮小期待が先送りされた結果、円安傾向が続いている。円安の継続は、輸入価格の上昇を通じて企業のコスト増加の一因となる一方で、輸出企業を中心に大幅な円安を背景に過去最高益を計上した企業も多い。 企業が業績の見通し等を作成する際にあらかじめ設定(想定)した名目為替レートと、実際の為替レートに大きな乖離が生じた場合には、その乖離が企業の事業遂行に影響を与えるほか、業績を大きく左右することとなる。とりわけ、中小企業の想定為替レートは企業の与信にも影響を与える。 そこで、帝国データバンクは、企業の設定(想定)為替レートについて調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年5月調査とともに行った。
想定為替レートは平均1ドル=140.88円、昨年の127.61円より大幅な円安水準を想定
2024年5月時点での企業の想定為替レートは、平均1ドル=140.88円(以下、1米ドル当たりの円レートを示す)となった。前年4月の127.61円から13円27銭安と大幅な円安水準を想定していた。中央値は145円、最頻値は150円だった。 想定為替レートの分布をみると、企業の24.7%が「146~150円」を想定し、最も割合が高かった。また、「136~140円」「141~145円」「151~155円」「156円~」がいずれも10%台となっており、130円台後半以上を想定する企業が7割を超えている。 企業からは、「企業業績としては為替が追い風となる」(ゴムベルト製造、135円)や「インバウンド訪日客の増加で賑わいがある」(損害保険代理、150円)など、円安の好影響を受けた意見がみられた。一方で、「円安による価格の高騰、販売価格の上昇にともなう販売数量の減少で利幅、売上高とも減少」(家庭用電気機械器具卸売、112円)といった、物価高騰の声も聞かれた。