なぜ人は霊感商法にダマされるのか? 高額な壺を買えば悩みが解決すると思い込ませる巧妙な手口
自分の内的世界のもやもや
それにしても、肩こりなんてものをきっかけにこうなるだろうか?と思う人もいるかもしれません。たしかに、本当に肩こりで困っているなら、しかるべき病院などに行けばいいのですから、病院に行かない程度の肩こりは、それほど深刻な悩みではないともいえます。 しかし、ここで重要なことは、病院に行くほどでもないけれど「なんとなく気になっている」という点です。このように、本人は悩みとは思っていないようなことにわざわざ注意を向けさせ、それがさらに大きな問題を引き起こすかもしれないという不安を吹きこむのです。 なんとなく気になっていたことがぼんやりした不安として大きくなり、どうしたらいいのか困惑している時に、鮮明な解決策として登場するのが壺です。これがまさに、プロジェクションが大きく関わっているところだといえます。 さらに違う例でも考えてみましょう。大切な人や家族がなにかの問題で深く悩んでいる、けれど自分が直接それを解決することはできない、大切な人や家族の苦しみを前にして自分はどうしたらいいのかわからず八方塞がりのなかにいる、そんな苦しみがあります。 そんな時に、「この不幸の原因は先祖の祟り」「けれど大丈夫、特別な力が宿っているこの壺を買って手元に置くことでお祓いができる」「買わないともっと大変なことになる」などと言われたらどうでしょう。 藁にもすがる思いで、いいえ、もしかしたらやっと光明を見つけたという安堵とともに、なんの変哲もない壺に大金を支払うかもしれないのです。 病院に行くほどでもないが気になる身体の不調と、大切な人や家族の苦しみでは、悩みの本質が異なるのではないかと思われるかもしれません。しかし、プロジェクションという視点からとらえてみると、それらには共通点があります。 自分ではどうしようもないからどうしたらいいのかわからないことや、原因が複雑なうえに解決策がはっきりしないのでぼんやりした不安が大きくなることなどです。 プロジェクションとは、自分の内的世界を外部の事物に重ね合わせるこころの働きです。 外部の事物とは、現実に存在していますから具体的ではっきりしています。一方で自分の内的世界とは、言葉にすらできないようなイメージでもありますから、はっきりとしたなにかではなくもやもやしています。 そのもやもやが外部の事物に投射された時、自分の内的世界をはっきりとしたなにかとしてとらえることができます。これはプロジェクションがもたらす効果のひとつです。 ずっとあなたを苦しめていたことの原因は○○だと断定し、解決策は目の前の壺という具体的な物体の購入として示す、霊感商法がやっていることはつまり、内的世界のもやもやと解決策を目の前の壺に投射させるプロジェクションのプロセスです。