港求めるエチオピアから読む中東・アフリカ地政学
サウジの動きにも注意
最近のティグレイ族とエチオピア政府との内戦においては、UAEは、大量のドローンをアビイ政権側に供与する等のテコ入れを行い、政府軍が劣勢を挽回することを可能としたが、この内戦では、トルコもイランもアビイ政権にドローン供与などで支援したとされる。これは、欧州とインド洋を結ぶ戦略上の要としてのアフリカの角におけるエチオピアの重要性を示すものともいえる。 他方、最近の傾向としてUAEがサウジと対立する機会も増えてきていることにも留意を要する。サウジアラビア自身がリスク分散の観点から、紅海方面へのパイプラインの設置や産業都市の建設などにより紅海への関与を強化してきており、UAEが、エチオピア海軍を通じて紅海やアデン湾で影響力を高めることを決して快く思わないであろう。 エチオピアに反発するエリトリアやジプチはサウジに頼るであろう。さらに、エジプトは、ナイル川上流の巨大ダム問題でエチオピアとは緊張関係にある。 また、UAEの宿敵ともいえるトルコは、2011年の当時のエルドアン首相時代以来モガディシュに軍事訓練基地を設置するなどソマリアの安定と復興にコミットしてきており、その領土保全を支持するであろう。つまり、この地域でエチオピア・UAEの枢軸に同調する国はなく、ソマリランドをめぐる問題で両国は孤立する可能性が高く、特にサウジアラビアのこの問題に対する対応が注目される。
岡崎研究所