牛丼チェーン3社が消費者からどう映るのか
雑然とさせるのか、雑然となるのか
いっぽうB社は、箸入れや調味料、テーブルの汚れが目立つなど全体に雑然とした雰囲気を醸し出していた。女性の1人客もいるが年配者が目立ち、Z世代の女子は入りにくいというのも納得させられてしまう。 しかし「キレイかどうかは二の次。味が良ければ良い」という客もいるし、逆に整頓されていないほうが心地よいという客もいる。そのため、どちらが良いかというわけではなく、A・B両社の“個性”といえるのかもしれない。ただ、方針としてあえて現状にしているのではなくオペレーションが間に合っていないための現状であるなら、改善が必要だ。
メニューで競う3社
牛丼に関しても、厚み、脂量、たれの染み具合、玉ネギの分量などにそれぞれ特徴が出ていた。顧客が何を求めるのか、または、どのような顧客に何を求めてもらいたいのかによって、牛丼というシンプルな料理のどの部分に重点を置いて開発するのか各社の考えによってすべてが変わってくる。 A社(前述のA社とは限らない)はとにかく肉が薄い。ここまで薄く裁断できる技術進化に感動するほどだ。薄いことで食感は軟かくなるため、牛肉がご飯と一体化する。つゆも濃い味でご飯への染み量も多いので、器を抱えてササッと食べたい人にはとても食べやすい牛丼だろう。 他の2社は、牛肉とご飯を別々に口にしてもそれぞれを感じることができる厚みがあるので、チーズなどと合わせて食べる際には、B・C社のほうは牛肉が負けないと感じた。 カレーは各社特徴を出しやすくなるメニューの1つで、牛丼以外の定番商品だ。 牛丼店好きの間で昔、「A社(前述のA社とは限らない)はカレーに力を入れていない」と言われていたA社のカレーは、やはり牛丼のサブとして際立つカレーに徹していた。牛丼に絡めて食べると合うカレーといえそうだ。B社はカレーライス単体で満足させるだけの量と適度な辛味、さらに塩分濃度が濃いので強い味が好みの牛丼ファンには食べやすいカレーと考える。また、C社はトッピングしやすい合わせやすいカレーで、パンチも利かせているのと、色艶が本格的なインドカレーの色に寄せているので女性でも食べやすく、いわゆる「カレー好きの人」にも対応可能なカレーだと思う。 ほかのメニューに関しても、国際色豊かなA社、さっぱりした味わい、大口をあけなくても食べやすいメニューがあるB社、王道の高級バージョンとボリュームメニューを目立たせたC社、などさまざまであるし、デザートメニューのバリエーションにも各社の姿勢がうかがえる。
牛丼店はメニュー数が少ないのか
Z世代に聞くと、おおむね「牛丼店はメニューが少ない」と答える。 しかし、某ハンバーグ店よりも実は数だけでいうと数段多いアイテム数なのだ。牛丼以外のものをいかに打ち出すかという点と、牛丼そのものの魅力をいかに再認識させるか、の2点は同時に考えていかなければいけないのだろう。 また、朝食メニュー以外の時間帯別メニューやセットにも全体としてさらなる工夫を望みたい。さまざまな客層の多様なニーズに取りこぼしがないような細かな配慮と目配りを今後に期待したいところだ。 次回、カウンター席という特徴に関して、続けていく。(食の総合コンサルタント 小倉朋子)
日本食糧新聞社