【佐藤琢磨インタビュー】太田に続く「海外への夢を」。東奔西走のHRC育成初年度と、自身の2025年
12月11日、HRC(ホンダ・レーシング)は都内で『2025Honda racing4輪レース体制発表会』を行った。会場にはアメリカからIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦しているアキュラARX-06も持ち込まれ、渡辺康治HRC社長、ドライバーの太田格之進、佐藤琢磨エクゼクティブアドバイザー、武石伊久雄HRC常務取締役が登壇して2025年の体制について質疑応答に応じた。 【写真】2025 Honda Racing 四輪レース体制発表会に出席した佐藤琢磨HRCエグゼクティブアドバイザー、HRC渡辺康治社長、太田格之進 登壇した佐藤アドバイザーは就任してからおよそ一年が経ち、ドライバーとして5月のインディアナポリス500マイルレース(インディ500)への挑戦を続けながらも、今季は国内外のサーキットで後進にアドバイスを送り、さらにホンダレーシングスクール(HRS)のプリンシパルとしても指導を続け、まさに東奔西走でサーキットを駆け回った。 そのなかで、太田の北米IMSA参戦や、従来の若手ドライバー、ヨーロッパ挑戦や国内の育成など、2025年の準備を進めていた。この体制発表会を機に、佐藤アドバイザーに改めて2024年の総括と、新しい北米挑戦を含む来季について聞いた。 ──2025年は新たに太田格之進選手にIMSA出場(3戦)のチャンスを与えることになりました。その経緯は? 「太田は昨年のSF(全日本スーパーフォーミュラ選手権)でルーキーながら優勝し、鮮烈なデビューシーズンを送りました。今年も最終戦で2連勝してモチベーションも高く、ドライバーして大きく成長しています」 「シーズン中はトラブルもあってリザルトに繋がらない時期もありましたが、つねにトップコンテンダーとして活躍してくれました。太田が右肩上がりのパフォーマンスを見せてくれたこともあるし、彼自身がつねに世界に行きたいと目を向けていたこともあります」 「コロナ禍前、彼がまだF4に乗っていた時に個人的に自分を訪ねて、世界に挑戦したいとアピールして来て相談に乗ったこともありました。国内で全力を尽くしながらも、気持ちはつねに外に向いてました」 「HRCとしても、IMSAにセミワークス体制で臨むことも決まり、そこに日本人ドライバーを乗せたい希望も相まって太田に白羽の矢が立ったというわけです。SGT(スーパーGT)の最終戦鈴鹿でも素晴らしいパフォーマンスでしたし、S耐(スーパー耐久)でも外国人のチームの中にひとり入って、英語でのコミュケーションも問題ないところも証明してくれました」 「フォーミュラだけでなくSGT、S耐で耐久レースの経験を積んでくれたと思います。太田の北米進出を皮切りに、続く若いドライバーにも海外への夢を見てもらいたいと思います。そういう取り組みのできるドライバーが続くのであれば、絶やすことなく北米挑戦を続けたいと考えています」 ──ヨーロッパでは岩佐歩夢選手がF1のサポートとして、加藤大翔選手がフランスF4でチャンピオンと、実力を認められるパフォーマンスを見せてくれました。彼らの2025年についてはどうなるのでしょう? 「まず加藤大翔については、昨年HRSのスカラシップを取り、今年フランスF4でチャンピオンになってくれました。(2025年は)フォーミュラ・リージョナル・ヨーロピアンチャンピオンシップ(FRECA)にステップアップします」 「FRECAはグランプリコースを主体に走りますので、コースを学ぶのにもいい習熟になります。(アンドレア・)キミ・アントネッリもこのレース出身ですし、ヨーロピアンチャンピオンシップの前にはミドル・イーストのフォーミュラ・リージョナルにも出場します」 「岩佐歩夢については、国内で2シーズン目のSFに挑戦することになります。F1関連はRBが決定するため、現時点で具体的な活動内容は未定ですが、ミルトンキーンズでのシミュレーターやグランプリ時のサポートは引き続き行う予定だと聞いています」 ──この2名の他に、2025年に海外挑戦される選手はいますか? 「今年HRSでスカラシップを取った佐藤凛太郎がフランスF4に挑戦します。HRSとFFSA(フランスF4)の関係も継続しますし、スカラシップ=海外挑戦ではないのですが、講師陣の満場一致の判断で行くことになりました。もう一方の新原光太郎は、国内のFIA F4にHFDP(ホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト)から出場します。彼にもチャンピオン目指して頑張ってもらいます」 ──日本国内の選手の動向はいかがでしょう? 「スーパーフォーミュラ・ライツでチャンピオンを取った小出峻には、鈴鹿でスーパーフォーミュラ公式/ルーキーテストに参加してもらい、どんな走りをしてくれるのか楽しみにしています。またF4でチャンピオンを取った野村勇斗は、スーパーフォーミュラ・ライツにステップアップします」 「国内外で育成ドライバーが出場したカテゴリーはすべてチャンピオンを獲得できましたので、どの選手も本当に素晴らしい結果を残してくれました。引き続き、彼らの若い才能を伸ばせるようにサポートして行きたいと思います」 ──最後は佐藤琢磨選手としてお伺いしますが、来季のインディカー挑戦はいかがでしょう? 「育成選手たちが頑張ってくれているので、自分はまだ調整中です!(笑)。冗談はともかくとして、インディ500参戦に向けて2024年の体制を継続して続けられるように準備を進めています」。 ──HRCエグゼクティブアドバイザーに就任して一年が経ちましたが、総括していかがでしょうか? 「3月のSFを皮切りに国内外のレースに足を運ばせてもらいました。4月、5月は自分のインディ500挑戦に充てさせてもらいましたが、6月、7月は加藤大翔のフランスF4でスパ(・フランコルシャン)、ニュル(ニュルブルクリンク)、ポール・リカールへ行きましたし、岩佐歩夢のF1テストに帯同もしました」 「その時には久しぶりに、ヨーロッパのジュニア・フォーミュラで一緒に戦った旧知の仲間と再会したり、トロロッソF1でテストをしていた時のエンジニアであるローラン・メキースがRBで活躍していたり、懐かしい話もしました」 「また、加藤のチーム選定では多くのチームと話しましたが、自分自身がF3に上がっていく頃を思い出して、あの時にこうだったらなぁと思った事を思い浮かべながら、一緒に一歩ずつステップアップしていくような仕事は楽しかったです。それに現場に足を運ぶのは大事だなとも改めて思いました」 「岩佐もF1のサポートでしっかり仕事をしてくれましたし、一緒にゆっくりとご飯食べながら、彼が今考えている事を話す機会もありました」 「日本に帰ってからもSF、SFL、SGT、S耐と毎週のようにサーキットに行き、ドライバーだけではなく、カテゴリーによってはチームやエンジニアとともに課題を克服するための取り組みも一緒に行いました」 「そんななかからIMSAの話が進み、自分が乗らないレースでもいろんな事が動いていて、あっという間の一年でしたね。来季も忙しくなるでしょうが、引き続きサポートを続けていきたいと思います」 [オートスポーツweb 2024年12月13日]