Netflix「動画配信で成功」を実現できた企業文化、経営者だけでなく従業員にまで浸透している
投資家としては、もちろんポジティブな話を聞きたいので、その場では会社のマネジメントやIR担当者の話を聞いて満足することになるが、後になってその話がポジティブな面を誇張したものであることに気づいた場合、「あの会社は誠実ではない」と判断されてしまう可能性がある。 投資家は、日常的に他の投資家と情報交換をしており、「あの会社は誠実ではない」という話が広まってしまうと、それが株式市場全体の共通認識となってしまう可能性すらある。そのようなリスクを避けるためには、ポジティブな話だけではなく、ネガティブな話も含めて、誠実にコミュニケーションを行なうことが重要だ。
以前、欧州の広告会社のマネジメントとミーティングをした際の話を取り上げたい。 その広告会社は、紙ベースの広告を駅やバス停などの人の目につくところに出すことによって、広告主から収益を得るビジネスを経営していた。ところが、この十数年のあいだに、広告の主戦場はインターネットに場所を移し、フェイスブックやグーグルに広告業界におけるシェアを奪われる状況が続いていた。 その会社に「この先10年を考えたときのチャレンジは何か?」と質問をしたところ、そのマネジメントは(1時間のミーティングのうち)30分を費やして、会社が置かれている現状、いまアクションをとらなければどのような深刻な状況に陥るか、といったネガティブな状況を包み隠さず説明したのだ。
多くの会社のマネジメントが、できるだけ素早くポジティブなトピックに話題を移すのと比べ、大きく違う印象を受けた。 投資家としてはポジティブなことだけを聞いて後で後悔するよりも、ネガティブなことも含め会社を理解したうえで、長期的な関係を築いていきたいという気持ちが強い。投資家と困難を共有し、一心同体で困難に立ち向かっていくようなスタンスでコミュニケーションを行なうことで、より強固な信頼関係が構築できるように思う。