小久保裕紀監督「日本シリーズは3敗できる」の落とし穴…“有原続投、スチュワート投入”ソフトバンク采配の「余力」がDeNAの「全力」に飲み込まれたわけ
有原の続投、スチュワートの投入
しかし、その裏、有原は期待を裏切る形となる。安打と四死球などでピンチを作ると、最後は押し出し四球で失点を献上してしまったのだ。この時点で0-4。続投は完全に裏目だった。 それでも4回表に、柳田悠岐が走者を1人置いて2ラン本塁打を叩き込む。ソフトバンクは4回裏にようやく、有原に代えてリリーバーの尾形崇斗を投入。尾形は無失点で相手の攻撃をひとまず堰き止めた。 しかし、DeNAも手綱を緩めなかった。5回表には先発の大貫晋一をスパッと代えた。ソフトバンクに向いた少しの「流れ」を断ち切る決断をしたのだ。投入したのは左腕の濵口遥大。その濵口は自らの役割をしっかり理解しているように、全力で腕を振って三者凡退に抑える。最後は雄叫びを上げながらベンチに戻る姿を見せ、これに球場全体が盛り上がった。 そして5回裏に、DeNAが猛攻を見せる。 ソフトバンクはこの回、カーター・スチュワート・ジュニアをマウンドに上げた。第3戦で先発し、4回3安打3四球1失点で降板。不安定なピッチングを見せた印象は強い。制球にやや難があるスチュワートに、ここでDeNAの勢いを止めろというのは荷が重いと感じられた。 もちろん、スチュワートをここで使いたかった理由も推測はできる。シリーズが翌日の第7戦にもつれた場合、リバン・モイネロの先発が予想された。ダーウィンゾン・ヘルナンデスとロベルト・オスナがリリーフとして控えているため、外国人枠の関係上、スチュワートは起用できなくなる。そのために、第6戦で登板機会を与えるという目論見があったのだろう。 しかし、ソフトバンクは2勝3敗と追いかける立場のチームで、本来ならそんな余力があるはずはない。ここでは、第4戦で先発して6回途中4安打4三振1失点と好投しており、経験も豊富な32歳の石川柊太という選択の方が割に合っていたように思える。 小久保監督の采配には、どこかペナントレースのようなのんびりとした感じがあった。「日本シリーズは3敗できる」という発言に象徴されるように、余力を残しながら戦っていたのではないか。対して、1勝のアドバンテージがあるDeNAの方が、勝利に対して全力で貪欲に立ち向かっていたのではないか。
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