小久保裕紀監督「日本シリーズは3敗できる」の落とし穴…“有原続投、スチュワート投入”ソフトバンク采配の「余力」がDeNAの「全力」に飲み込まれたわけ
日本シリーズの優勝が決まったあとの取材は慌ただしい。 日本一チームは胴上げあり、優勝インタビューあり、セレモニーあり、グラウンド一周あり、ビールかけありと行事が多いからである。ナイター開催ではほとんど時間がない。一方、敗れた側は敗因を分析するような言葉もなく、手短に終わっていくというのが通例だ。 【現地写真】「あのとき先にピッチャー交代していれば…!?」と、たられば語りをしたくなる第6戦から、自分でタイムリーを打つ有原、前走者に追いつきそうな周東らの躍動までホークスの日本シリーズ全戦を現地写真でプレイバックする【70枚超】 何年前だったか。優勝が決まった日の試合の決勝点がスクイズだったことがあった。あまりにも見え見えだった作戦を、敗軍の将に「予測していなかったのか」と尋ねたら、筆者のこめかみを貫通せんばかりの鋭い視線で睨みつけられたことがある。 日本シリーズという大舞台。繰り広げられた試合は、当然、勝者と敗者とを分かつことになるが、その原因を分析してこそ、野球の奥深さを知ることができる。それを伝えるのが我々の役目だと思うが、現状、敗者はそっとしておこうという空気がある。
「流れ」は勝手にやってくるのか?
さて、2024年の日本シリーズはセ・リーグ3位のDeNAが、パ・リーグを圧倒的な力で制覇したソフトバンクを破るという、なんともドラマチックな結末を迎えた。 なぜ、ソフトバンクはDeNAに勝てなかったのだろうか。 「雨で中止になって『流れ』が来るかなと思いましたけど、来なかったですね」 そう振り返ったのはソフトバンクの小久保裕紀監督だった。 スポーツに存在する「流れ」というものは度々議論にもなるが、「流れ」とは小久保監督がいうように、勝手にやってくるものなのだろうか。それとも、自ら手繰り寄せられるものなのだろうか。 このシリーズ中の、まるで達観したような小久保監督のコメントからは、シーズン中と同様の戦い方に終始しているような雰囲気を感じていた。第1戦終了後の勝利監督インタビューでの、「日本シリーズは3敗できる」という発言もどこか、「流れ」の存在を自覚しながらも、全体の帰趨については楽観しているようにさえ聞こえた。 一方のDeNA・三浦大輔監督は明快だった。 誰もがそのコメントを予測できるくらい、指揮官の言葉は一貫していた。 「必死にやっているだけですよ。いつも言っていますけど、全部出し切って勝負できるかどうかだと思っています。なりふり構わず、必死に。毎試合、毎試合、全員が出し切って終わったら、明日に向けて準備しようって。それだけです」 戦い方もはっきりしていた。 とにかく試合が終わるまで、全イニングにおいて、采配も、選手たちのパフォーマンスもベストを尽くす。三浦監督は局面局面での最善の策を講じ、選手は必死に応えていく。当然、一人の力ではどうにもならないことがあり、そこは交代選手が代役を務めて埋め合わせをしていく。 第1戦は9回裏を迎えて0-5のビハインドだったが、それでも諦めずに3点を返して一矢を報いた。第2戦も4回までで6失点した。しかし、後半に追い上げて結果は3-6というゲーム。これが後々に生きた。
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