弱体化が続く町内会・自治会と地域防犯の切っても切れない関係
<物理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法>
反対に「入りにくく見えやすい場所」では、犯罪者は犯行をあきらめる。したがって、そうした改善を施すことが必要であり、それには、個人で行うミクロの対策と、集団で行うマクロの対策がある。 これを地域の安全に当てはめると、ミクロの対策が「入りにくく見えやすい家」にすることで、マクロの対策が「入りにくく見えやすい地域」にすることになる。こうした二段階の対策は、犯罪者の行動に適合している。というのは、例えば、空き巣は、まずマクロ的にターゲットとなる地域を選び、その後に、ミクロ的に特定の家をターゲットにするからだ。 町内会が担うのは、もちろんマクロの対策だ。では、具体的に何をどう進めたらいいのか。 物理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法として、欧米で多用されているのは、ハンプと監視カメラだ。このうち、ハンプとは、車の減速を促す路面の凸部(盛り上がり)のこと。幹線道路から生活道路に入る場所にハンプを設けておけば、ひったくり、空き巣、誘拐犯などが犯行後に全速力で幹線道路に逃げられない。つまり、「入りにくい(逃げにくい)場所」として、犯罪がやりにくい場所になる。 イギリスでは、「DIYストリート」という草の根プロジェクトで、住民によるハンプ設置が認められている。日本でも、2001年の道路構造令の改正によりハンプの設置が認められたが、普及は進んでいない。
<心理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法>
心理的に「入りにくく見えやすい地域」にする方法としては、「割れ窓理論」が欧米で採用されている。ハーバード大学研究員(後にラトガース大学教授)のジョージ・ケリングが1982年に発表した犯罪機会論だ。 「割れた窓ガラス」とは、管理が行き届いてなく、秩序感が薄い場所の象徴。言い換えれば、地域社会の乱れやほころびを表し、その背景に地域住民の無関心や無責任があることを想像させる言葉だ。そうしたシグナルとしては、このほかに、落書き、散乱ゴミ、放置自転車、廃屋、伸び放題の雑草、不法投棄された家電ゴミ、野ざらしの廃車、壊れたフェンス、切れた街灯、違法な路上駐車、公園の汚いトイレなどがある。