妊娠しやすくなるって本当? 風邪薬「ミューシネックス」の服用が、妊活中の女性たちの間でトレンドに。その真意を米専門家医が解説
ミューシネックスで妊娠しやすくなる、というのは事実か?
「これは非常に厄介な問題です」と話すのは、Boston IVFの生殖手術ディレクターのピエトロ・E・ボルトレット医師。なぜなら、妊娠は"○○をしたから確実にこうなる"という明確な答えがなく、あまりにも個人差が大きいから。そもそも、不妊に悩む人の中には子宮頸管粘液とは無関係の部分で、妊娠へのハードルの高さに直面している可能性もあると、医師は述べる。 また、妊娠するためにミューシネックスもしくはグアイフェネシンを含む他の薬を用いることについて、無作為抽出によるプラセボ薬と比較した臨床実験が行われていないことも、医師がこの方法を推奨しにくい要因になっている。 「この方法は、理論的にいえば確かに効果があるかもしれないが、エビデンスの大部分は逸話だ」と、ミシガン州立大学薬理学および毒物学准教授のジェイミー・アラン博士はいう。だが博士は、「ミューシネックスが妊娠にどう関係するかというメカニズムはいまだ不明」としながらも、この薬剤が粘液を薄める効果があることは確かだと説明。 ボルトレット医師もそれには同意。とはいえ、妊娠を試みる時に既に頸管粘液が薄くなっている可能性が高いという点にも注目している。「頸管粘液は月経周期の最初の頃は濃く、排卵時期になると薄くなっていきます。そのため(その時期に妊活を行った場合には)精子が中に入りやすく、子宮腔に閉じ込めて受胎する仕組みなのです」。 ボルトレット博士は、粘液が濃い嚢胞性線維症の女性にとっては、理論上はメリットがある可能性があるが、それ以外のほとんどの人にはメリットはないと明かす。「一般の人に役立つと示唆するデータは現段階でないため、医師が推奨する方法ではありません」。 これにはアラン博士も同意見だ。「ミューシネックスが直接的に妊娠率を高めていることを示す重大なエビデンスはありません。咳や粘液の排出を調べた文献から、保湿するとミューシニックスが粘液に与えるのと同様の効果があることはわかっています」。 つまり、ミューシネックスを服用しなくても、単に水を飲んだだけでも同じ効果があるかもしれないということだ。