「俺に何があってもやめるなよ」手術室に運ばれる夫から励まされて。芸人おばあちゃん「舞台に立てないときが必ず来る。だからこそ今を精一杯楽しみたい」
◆3年間、無遅刻無欠席で卒業 兄の介護をしていたときも同じ気持ちでした。 兄は独身でひとり暮らしをしていたので、難病で失明し、さらに認知症になってからは、自分ひとりで生活するのはとうてい無理な状態でした。 でも、看病も介護もそれだけにどっぷり浸かってしまったら、こちらの気も滅入るじゃないですか。 自分にとって楽しい時間を大切にしてほしいと兄も言ってくれたので、NSCの時間割とにらめっこして、授業のない時間帯に兄を病院に連れて行ったり、日常生活の世話をしたりしながら、1年間、なんとか無遅刻無欠席で卒業することができました。 うちから神保町のNSCまでは片道2時間以上もかかるので、1時間目の授業に出るためには朝5時に起きないと間に合いません。 NSCは授業が始まる前に、学校に着いた順番で階段に生徒がズラーッと並ぶ決まりがあるんですけど、10番以内に並んでいないと「ネタ見せ」の授業で、自分が作ってきたネタを講師の先生に見てもらえないときがあるんです。 せっかく作ってきたネタを見てもらうために、少しでも早く学校に着かなきゃと。夕方、家に帰って来てからも、その日に習ったことを復習しなきゃならないので、寝るのは夜中の12時を過ぎることもありました。 その合間に、兄の介護をするのはさすがに体力的にしんどいときもありましたけど、それで絶対にやめたくないという気持ちがあったので、なんとか頑張れたのだと思います。
◆食事の支度は夫担当 幸いなことに、術後の経過もよくて、今、夫は普通の生活を送っています。家事も手伝ってくれるようになり、毎日の夕飯の支度は夫の担当です。 鯛のアラを買って来て、それで出汁をとってうどんの汁を作ってくれたりするので、私が作るより美味しいんですよ。 買い物も夫の脳トレになると思い、「マヨネーズはこっちのスーパーが安い」「洗剤はあっちのほうが安い」とあれこれ情報を叩き込みました。 そのかいあって、仕事をしていたときは家事なんていっさいやらなかった人だったのに、今や買い物と料理はバッチリ。 70代になってからでも、夫の教育ってできるものなんですね。(笑) 私が芸人になったからと言って、決して生活のレベルは変えません。みなさんが想像しているほど高額なギャラじゃないですし(笑) 、いつなんどきどうなるかわからない。 なので生活のレベルを上げるなんて無理、無理。 だから、「お父さん、お弁当に半額シールが貼られる時間になったよ。買い物に行って来て!」と、今までどおりの生活を続けています。
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