ヘンダーソンに続いてベンゼマもサウジアラビア脱出を図る
アル・イテファクからアヤックスへ──。ジョーダン・ヘンダーソンがヨーロッパに戻ってきた。サウジアラビアでのチャレンジは、わずか半年で幕を閉じた。
異なる文化圏に対応するのは難しい。同じ日本でも東京と大阪、沖縄と北海道では食文化が違い、独特の方言もある。各自の環境適応力によるとはいえ、馴染むまで時間が必要だ。
ヘンダーソンは時間ができるたびに何度も何度もイングランドに帰国し、友人と会っていたという。精神的に限界だったのだろう。週給700万ポンド(約13億円)もの好条件を捨て、アル・イテファクとの契約を解除した。
おそらく、ヘンダーソンに続く者も現れる。文化の違いだけではなく、サウジアラビア・プロフェッショナル・リーグ(以下SPL)のレヴェルに困惑している選手も少なくない。戦術が曖昧で、プレー強度が低い。分かっていたはずだが、実際に闘ってみると、ヨーロッパとは驚くほどの大差があった。
「ヨーロッパで生まれ育ったわれわれが、サウジアラビアの文化に適応するのは至難の業だ。この冬はともかく、退団を考える時期は必ずやって来る」
スペイン代表歴を持ち、昨夏からアル・ナスルでプレーするアイメリク・ラポルテも困惑していた。
一方、アル・ヒラルに所属するクリスチャーノ・ロナウドは、「リーグアン(フランス)より上だ」とSPLを評価している。
実に彼らしい強烈な自己肯定だが、フランスのリーグでプレーした経験がないため説得力に欠ける。SPLの平均入場者数は7854人。オールド・トラッフォードやサンティアゴ・ベルナベウ、アンフィールドであれば、閑古鳥ですら失笑する。
キャリアのピーク、あるいはこれから頂点を迎える選手は再考せざるをえない環境だ。33歳のヘンダーソンでさえ、危機感を覚えてアヤックスに移籍した。
「アヤックスのユニフォームをまとったヘンダーソンは幸せそうに見えた。それがいちばん大事なことなんだよ」
リヴァプーのユルゲン・クロップ監督も、愛弟子のヨーロッパ復帰に胸をなでおろしていた。