明秀日立に女性副主将 田中杏璃さん「一緒に戦う」 センバツ
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)の第5日、大島(鹿児島)との1回戦に臨む明秀日立(茨城)のベンチに、記録員として田中杏璃(あんり)さん(3年)が入る。マネジャーにして同校野球部で初めての女子の副主将だ。「支えるよりも、一緒に戦いたい」と、選手たちと同じ目線で初戦を迎える。 【過去には小芝風花さんも】歴代センバツ応援イメージキャラ 2歳上の兄大誠さん(東北福祉大)も同校野球部で上位打線を任され活躍した。父も祖父も硬式チームの指導者という野球一家。「野球をやれば自分のことを見てくれるかも」と小学校で野球を始めた。結果は出せなかったが、中学生になると「仲間が活躍するのを支えたい」と、祖父が率いる硬式チームのマネジャーに。一般的なマネジャーの枠を超え、走者の位置やバントの構えなど、試合展開に合わせて声を張り上げてきた。 高校進学にあたり、「マネジャーとして甲子園に行きたい」と選んだのが明秀日立。大誠さんの他に、青森・光星学院(現・八戸学院光星)を春夏8度の甲子園に導き、巨人の坂本勇人選手らプロ選手を育てたことで知られる金沢成奉監督の存在も大きかったという。 厳しい監督だと大誠さんから聞いていた。しかし、兄の帰省時に監督から手紙が届くのを見て、約100人の部員に自ら手紙をしたためる姿勢に感動した。 明秀日立には長く女子マネジャーがいないことを知っていたが、手紙で志願。幸運だったのは、監督も田中さんのはつらつとした姿を見知っていたこと。女子運動部用の寮に部屋を設けるなど、受け入れの態勢が整えられた。 ◇監督から信頼「私と同じ目線」 正式なマネジャーが置かれていなかったため、何をすべきかは誰も指示してくれない。中学時代の経験を基に自ら役割を考え、雑用を全て引き受け、ベンチで声を上げ続けた。 昨夏の新チーム発足で金沢監督は田中さんを副主将に任命した。「私と同じ目線、意識で野球をしている」と信頼は厚い。 責任の重さに不安もあった。それでも向き合うことを誓ったのは兄の無念を覚えているからだ。2020年、大誠さんは新型コロナウイルス禍で夏の甲子園に挑戦する機会を奪われ、悔いを残しながら野球部を去った。「私たちが甲子園に行かなければ」。そう誓ってきた。 ◇勝利をつかむ進言も 昨秋の県大会。21年夏の甲子園に出場した鹿島学園との試合で、田中さんは金沢監督の采配に異を唱えた。エース・猪俣駿太投手(3年)の疲労を考慮して打順を下げようとした監督に、「変えない方がいいんじゃないですか」と進言した。「今まで勝ってきた形だから。あとは直感です」。この言葉を受けて監督が打順を戻すと、猪俣投手は九回表に同点打を放ち、逆転につなげた。「よく助言してくれた。あれで試合をひっくり返せた。下げていたら今の明秀はない」と金沢監督は振り返る。 金沢監督は田中さんを「打球が上がった位置などについて、誰よりも早く反応して声を出す。勝つ意識が行動に表れている」と評価する。センバツでも「19人目の選手」として臨むつもりだ。【長屋美乃里】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。