3M日本法人敷地から高濃度のPFAS、相模原市が明らかに
記事のポイント①3Mジャパングループ事業所の井戸水などから高濃度のPFASが見つかった②相模原市は事業者からの検出報告を議会にも報告せず、情報公開請求で判明③欧米を中心にPFAS規制が進み、今後も訴訟が増加する可能性
神奈川県相模原市はこのほど、3M日本法人の相模原事業所の敷地内で、井戸水などから高濃度の有機フッ素化合物(PFAS: ピーファス)が検出されていたことを明らかにした。市は同社から2022年10月に報告を受けていたが、議会や市民には報告していなかった。PFASは近年、発がん性などが指摘され、欧州や米国を中心に規制が進む。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
PFASは、水や油をはじき、熱に強いといった特徴から、調理器具の焦げ付き防止や衣料品の防水・撥水加工、食品包装や化粧品、消火剤や半導体など、多くの製品に幅広く使われている。自然界ではほとんど分解せず、生物の体内に蓄積することから、「永遠の化学物質」とも呼ばれる。 しかし、環境汚染に加え、がん、肝臓や心臓への影響、子どもの発達や免疫系への影響など、さまざまな健康影響が懸念されている。PFASのうち、「PFOS(ピーフォス)」「PFOA(ピーフォア)」「PFHxS(ピーエフヘクスエス)」の3種類については、国連の有害化学物質を規制する条約(ストックホルム条約)で廃絶対象となっている。
■市は「井戸水に関することは原則非公開」と釈明
国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超えたPFASは、全国各地で見つかっている。その一つ、相模原市では、2022年度の市の調査で市内の川や地下水から高濃度のPFASが検出された。 市民団体「相模川さがみ地域協議会」は2024年3月、PFASに関する詳しい情報を得るために、市に公文書開示請求を行った。市は同市中央区南橋本の事業者からPFAS検出報告を受けていた。だが、事業所名など重要な部分に墨が塗られていたため、詳しいことは分からなかった。 納得できなかった同会は、請求文言を変更し、再度開示請求をした。その結果、スリーエムジャパンイノベーション相模原事業所が、敷地内の複数の井戸や雨水池などのPFAS検出結果を市に報告していたことが分かった。 敷地内のPFASの最高値は、井戸の1つから見つかった水1リットル当たり約1900ナノグラム。内訳はPFOAが1700ナノグラムで、残りの200ナノグラムはPFOSやPFHxSなどだ。 同事業所は、3Mジャパンの製造・研究開発拠点の1つで、「当事業所での生産活動の中で、排出されるフッ素化合物は適切に処理されている。土壌汚染につながる排出はない」としている。 これについて、これまで市民にも議会にも報告しなかった理由を、市は「井戸の所有等に関する情報は、公にすることにより、正当な利益等を害するおそれがあるものとして、原則非公開とする」と説明している。同会は、事業所と直接意見交換するため、市に仲介を依頼した。 過去に工場から高濃度PFASが検出された例としては、三井・ケマーズ フロロプロダクツの清水工場がある。静岡市は2023年、市の調査で、工場周辺から高濃度のPFASが検出されたことを明らかにした。