「北朝鮮へ逃げようかしら」...反戦派ジャーナリストがロシアから逃亡する「極秘計画」の驚くべき詳細
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第45回 『「消えたビデオ配信」...「完全に無視された」女性記者が裁判で目の当たりにしたロシア政府の《深すぎる闇》』より続く
「北朝鮮へ逃げようかしら」
思いがけないところから救いの手が差し伸べられた。 「〈国境なき記者団〉がヨーロッパで動いているようです」クリスティーナがわたしに言った。「あなたの元の同僚のジャンナ・アガラコワがコンタクトをとってくれています」 「すばらしいわ」わたしは天井まで跳び上がらんばかりに喜んで叫んだ。これが本当なのか信じがたかった。 「ちょっと地理の勉強をしましょう」 わたしは朗報に浮き浮きして、パソコンの世界地図を開けて娘に言った。 「ロシアと国境を接している国はどこ?」 「エストニア、ラトヴィア、リトアニア」とアリーナが国名を挙げた。「ベラルーシ、ウクライナ」 「それにフィンランド」わたしが続けた。「ノルウェー、ジョージア、アゼルバイジャン、カザフスタン、中国、モンゴル、北朝鮮もあるわ」 「どこへ逃げるの?」クリスティーナが話に加わった。 「たぶん、北朝鮮かしら」わたしは冗談めかして言った。みんなで笑った。
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