【バイク短編小説 Rider's Story】記憶を辿るショートトリップ
〈再会の日〉 2023年10月28日 土曜日 寝坊した。 月末の金曜は決まって仕事が忙しく、昨晩は帰宅が遅くなった。それでも早めに布団に入ったのに寝付けなかった。ハッと気づいて時計を見ると、あと十分で七時になる時間だった。八時に集合と聞いていたから、私は五〇キロもない距離を高速道路を使ってカワサキエストレヤを走らせた。 ネオパーサ清水に到着したのは八時を少し過ぎていた。 ZuttoRide x クシタニコーヒーブレイクミーティングの会場《ぷらっとパーク》とは、どこにあるのだろう。案内表示を見ると、どうやら下道から来たお客が停める専用の駐車場で、サービスエリアからは乗り入れできないようだ。 サービスエリアにバイクを停めたまま、歩いて《ぷらっとパーク》へ向かった。売店や飲食ブースのある施設を通り抜け、屋外へ出た。視界がひらけた。目の前の小高い山には、所々紅葉が見られた。すがすがしい空気と眩しい日差しで気持ちがいい。たくさんのバイクが並んでいた。ライダーたちは皆、クシタニコーヒーのカップを片手に楽しそうだ。 みんな、どこにいるのだろう。 桑名も西形さんの姿も見つけられない。 今年の年明けに桑名と出会って、私は彼に言われた通り清水のバイクショップに行った。西形さんと会うことができて話をした。私がしたのはそこまでだった。どのように連絡が行き渡って、誰が来るのかもわからないまま、八時集合と聞いて、今日ここに来た。 視線の先にV-MAXが見えた。桑名のオートバイも、確かあれだった。隣には青色と赤色のGPZ900Rが並んでいる。その隣にセロー、RMX、CRMに、BIG1と続く。どれも見覚えのあるオートバイばかりだった。 桑名と、小山さんの……そして沢野さんの、西形さん、寺田さん、牧野、石井のバイクじゃないのか? きっとそうに違いない。誰のバイクか全部わかる。 だって十五年前と変わっていないのだから。 「おーい、高田くん」 呼ばれて振り返ると、クシタニコーヒーのカップを手にしている昔の仕事仲間たちが、全員そろってそこにいた。