蕨市・川口市「在日クルド人問題」支援団体代表者が語る“ヘイト”の連鎖が止まらない背景
きっかけは公園で出会った小さな姉妹
――「在日クルド人と共に」を立ち上げられたきっかけを教えてください。 温井氏:2016年、小学生と思われる年頃の姉妹が、平日の昼間にもかかわらず公園で遊んでいました。妻(温井まどか氏)がスマートフォンの翻訳機能を使って会話したところ、トルコ国籍のクルド人だということがわかりました。 姉妹は「学校に行きたい」と言いました。そこで保護者と話をして、近隣の学校と交渉して就学手続きを行いました。その家族との付き合いがはじまり、食事をごちそうになったりもしました。 当初、クルド人のことはよく知りませんでした。当時はクルド人の祭り「ネウロズ」が蕨市内の公園で行われていたので(近年はさいたま市の秋ヶ瀬公園で開催)、それを見物に行ったことがあるくらいです。 しかし、クルド人の家族との付き合いを通じて、在日クルド人が置かれている状況を知りました。母親と子どもは難民申請の結果が出るまでの間にもらえる「特定活動」という在留資格を持っていましたが、父親は在留資格を持たず、仮放免で一時的に収容を解かれていた状況でした。就労は禁止、移動も制限され、健康保険や住民票もなく、住居を借りることも難しい状況です。 日本で暮らしているクルド人のほとんどが難民申請をしているにもかかわらず、誰一人として難民認定がされていないことも知りました。 当初は他の団体で活動していましたが、2021年12月、30年近く前からクルド人とかかわる活動をしている松澤秀延氏と私たち夫婦の3人で「在日クルド人と共に」を立ち上げました。 活動目的は、入国管理制度や難民認定制度の抜本的な見直しを求めると同時に、在日クルド人と地域住民の間に入って相互理解を進めることです。 ――主にどのような活動を行っていますか。 温井氏:毎週日曜日に日本語教室を開催しています。大人も子どもも、参加しています。また、クルド人の他にも、トルコやコンゴの方々も参加しています。 マンツーマン形式の、会話を重視した学習です。教師はボランティアですが、こちらが日本語を教えるだけでなく、学習者からトルコ語やフランス語も教えてもらっています。また、ボランティアには日本人も含め、様々なルーツの人がいます。 2月には、戸田市で開かれた日本語スピーチコンテストに学習者の方が参加されました。また、ネットで「在日クルド人問題」が取り上げられるようになってからは、川口市や蕨市から参加するボランティアも増えています。 昨年11月には「移住者(移民・難民)と共にーともくらフェス」を共催して、クルドのほかにもウクライナやフィリピンなど九か国の地域の食べ物の販売や、中東の伝統楽器の演奏を行いました。6月と10月には川口市で写真展を開催しています。