「障害者の仕事が減った」悩む企業が新たな挑戦 働きやすい環境に、IT人材も #令和に働く
発達障害や精神障害の人の中には、「通勤や人混みが苦手」「光や音に過敏」といった特性から通常の環境にストレスを感じる人も多い。そうした点に配慮すれば、とがった能力を発揮し、企業にとってはIT人材の確保、本人にとっては自己肯定感の高まりという好循環につながる。 とはいえ「コミュニケーションが苦手な人が本当に仕事をできるのか」。パーソルの担当者によると、そうした反応を示す企業は多いという。そこで、ニューロダイブではITスキルの習得と共に、自分ができることや業務内容を説明する「言語化」能力を身に付けてもらうことにも力を入れる。 利用者は訓練で実践的な成果物を作り、自ら企業にプレゼン。就職は実習を経てから決まるため、ミスマッチはほとんどないという。
打たれ弱くてもITエンジニアで活躍
ニューロダイブで人材を見いだした企業の一つが、江崎グリコ(大阪市)だ。 「課題を渡したら、1週間ほどで仕上げてしまった。優秀だなと思ったんです」。デジタル推進部マネジャーの橋本英彦さんは、今年1月に採用した若宮悠希さん(28)のことをそう話す。ニューロダイブの成果物発表会で若宮さんを見て、ITエンジニアとして採用を決めた。 若宮さんは大学院で知能情報工学を専攻。ソフトウエア会社で働いていたが、強い口調で話されるのが苦手で「気分変調症」との診断を受けた。昨年、精神障害の手帳を取得し、ニューロダイブを利用していた。 グリコは若宮さんの希望に沿って毎週1回、上司の橋本さんに相談できる場を設けている。「自分は打たれ弱くて、落ち込むと長く引きずってしまう」と言う若宮さん。「前の会社ではそれでうまくいかなかったのだが、今はすごく働きやすい」と話す。 橋本さんはこう話した。「エンジニアは技術があってなんぼ。障害があっても、腕は確かなので問題ない」
「重要だが緊急ではない仕事」でプレッシャー気にせず
IT人材のニーズの高まりを受け、ニューロダイブから企業に就職した人は、事業開始から5年間で90人以上いる。就職先はグリコのほかゲーム会社、自動車メーカー、銀行などさまざまだ。 プラント大手、日揮ホールディングスの子会社「日揮パラレルテクノロジーズ」(横浜市)はこれまでに約10人をニューロダイブから採用した。社員37人のうち約9割が発達障害や精神障害のある人たちだ。 プラントを仮想空間で再現したり、月面開発プロジェクトで月面のメタバースを作ったり。日揮グループ各社のさまざまな業務課題をITで解決する役割を担う。