新星・上薗恋奈はフリー進めず「悔しい」 三宅咲綺は高橋大輔の「根性」学び躍進...全日本女子の舞台裏ストーリー
【フリー棄権の三原舞依は後輩にエール】 一方、全日本では過去7大会すべてで5位以内に入り、2022年は2位だった三原舞依は、今年の全日本SPは23位だった。そして翌日、フリー棄権が発表された。本人は決して自ら明かさなかったが、足首や股関節のケガで十分に追い込むこともできなかった。 「集中力の天才」 そう言われる彼女だが、限界を超えていたのだ。 「GPシリーズが終わって......最後の1週間の追い込みで、苦しい時間があって追い込みきれませんでした。それが今日のショートに出てしまって」 三原はそう言って、気丈に説明していた。 「たくさんの選手がいろんな痛さや不安な面を抱えながら努力を積んで、試合でも全力以上を出せているんだと思います。そこが(今回自分は)うまく合わせられなくて。でも、多くのスケーターが目指す全日本という舞台で、諦めずに滑り続けるというのはできてよかったなって思います」 そして彼女らしいのだが、三原は自分のことよりも同門の後輩である三宅咲綺を労い、エールを送っていた。 「(三宅)咲綺ちゃんは、全日本までの期間の練習をすごく頑張っていました。6分間練習が終わり、控え室で(三宅の演技への)声援を聞いていたら、大丈夫だなって思いましたね。(次の順番で自分が)リンクインする時に咲綺ちゃんの満面の笑みを見られて、私もすごく幸せでした。頑張っている姿を見ていたので、試合で出しきれてうれしいなって」 彼女の思いは、しっかり結びついている。その絆がフィギュアスケートの核にあるのだ。
【殻を破った三宅咲綺は自己最高順位】 絆を感じているのは、三宅も同じだった。リンクに入る三原の背中へ励ましの声をかけていた。託すような気持ちがあって、表現者になれるのだろう。 三宅はSPで会心の演技を見せた。冒頭の3回転トーループ+3回転トーループを決めるなどすべてのジャンプを着氷。8位に躍進した。 「自分のなかで、ジャンプの出来としては80点くらいだったんですが......本番で決められたのはよかったです」 三宅は言う。全日本は2018年から出場しているが、これまで最高は12位で無念さが募っていた。昨年も16位だった。 「2022年は(最終グループの)フリーで場違いじゃないかってもの怖じしてしまい、去年はショートで転倒し、フリーも2本ジャンプを失敗して......悔しい思いをしていて。絶対、ここ(全日本)に帰ってくると思っていました」 三宅はそう言って、殻を破ったきっかけを明かした。 「(高橋大輔プロデュースの)『滑走屋』に出演させてもらい、氷の上で16時間も過ごしました。経験したことがなかったので、これがプロの技で、そこまでしないと人前で滑れないという大輔さんのプロの根性を見せてもらって。本当に『滑走屋』に出られてよかったです。今年は(全日本の舞台が)ふさわしいと思って頑張ることができました」 フリーの演技、三宅は堂々たるものだった。9位と健闘。総合でも9位に入り、彼女はひとつのボーダーを越えた。