日米通算2700安打!右打席と左打席で人格を変えたスイッチヒッターの極意・松井稼頭央さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(20)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第20回は松井稼頭央さん。走攻守ともハイレベルな球史に残る内野手は大阪・PL学園高まで投手だった。プロ入り後にスイッチヒッターへ転向し、日米通算2705安打を積み上げている。その両打ちの極意は何だったのか。(共同通信=中西利夫) ▽両打ちは幻に終わった可能性も 僕はピッチャーだったので、野手としてやっていくのは本当にゼロからのスタートでした。プロの壁が高いという以前のレベルで、やらなければいけないこと、吸収することがいっぱいありました。高校時代との違いを感じるところまでは行き着いてなかったです。 (西武入団当初は)谷沢健一さんが打撃コーチでした。対左投手の時は打率が良かったのですが、対右投手は2割もなかったと思います。それで足もあるということでスイッチヒッターをやってみるかとなりました。左打席に立つと、真ん中からちょっと内角よりの球でも体に当たると思いました。「このボールが、こんなに当たりそうに感じるの?」と。でも、2年目の春季キャンプは守備も走塁も全部やらないといけませんでした。シーズンに間に合わないから、スイッチ転向は一度はなしになりました。
2年目のオフに土井正博コーチから「来年から本格的にやります」と言われ、投球をよける練習から始まりました。右手をけがしてしまうと投げられなくなるので。初めはテニスボールとか軟らかいものでやって、それから硬式球でやりました。右半身を薄いスポンジで覆い、肘当てを付けて。硬式は8割の力でも当たるとむちゃくちゃ痛いですからね。スポンジが1枚あるのとないのとでは全然違います。内側(腹部側)が弱いので、しっかり背中側でよけないといけない。当たって(球の威力を)吸収してしまうと駄目。打撃マシン相手の練習でも空振りしたら膝に当たるぐらいのところに立たされました。右サイドの壁をつくらないとさばけないので、そういう練習から。それまで左で振っていないので、素直というか無駄がないというか、スムーズには振れているとは言われました。でも、僕は自分では全然分からなかったです。 東尾修さんと出会っていなかったら、今の僕はなかったでしょう。東尾監督が抜てきし、スイッチにしても、そこでどれだけ目をつぶっていただいたかとなると、やっぱり東尾さんと出会わなければ、今の僕はないと常に思っています。