干ばつに揺れるナミビア...政府の野生動物殺処分計画が激しい反発を呼ぶ理由
<ナミビア政府が深刻な干ばつ対策の一環として、野生動物の殺処分計画を実施中。PETAをはじめとする動物保護団体は、計画の残虐性と効果の欠如を非難している>
過去数十年で最悪の干ばつに見舞われ、人間と野生動物の対立が激化するナミビアで、政府主導による野生動物の殺処分が始まり、物議を醸している。この殺処分によって、すでに150頭以上が殺され、さらにゾウ、シマウマ、カバを含む700頭以上が処分される予定だ。 【動画】前を走るトラックがゾウにひっくり返される瞬間 ナミビアの環境・林業・観光省が8月26日に発表した殺処分計画は、広範な干ばつ救済政策の一環として、地元民に狩猟肉を提供することを目的としている。また、放牧圧を減らし、利用できる水の量を増やすことも目的だ。 しかしこの計画は、動物愛護団体から強い反対を受けている。「動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA:People for the Ethical Treatment of Animals)」は、この殺処分計画は近視眼的で、効果がなく、残酷であると批判した。PETAのシニア・バイスプレジデントを務めるジェイソン・ベイカーは、ナミビア首相宛ての公開書簡の中で、この計画は、野生動物の個体数に壊滅的な打撃を与える可能性がある、と警告した。 「たとえ数頭でも(ゾウを)殺すと、群れ全体が壊滅的な打撃を受け、混乱が生じる可能性がある。生き残ったゾウの死亡率が上昇し、ストレスを感じたゾウが、人間と動物の対立を悪化させる危険性もある」とベイカーは書いた。 本誌は、ナミビアの環境・林業・観光省に対して、ウェブサイトを通じてコメントを求めた。 生態系への悪影響の懸念も PETAはナミビア政府を、長期にわたる戦略的解決策を必要とする、より広範な問題のために、野生動物をスケープゴートにしていると批判する。PETAは、人獣共通感染症のリスクなど、殺処分がもたらすいくつかの意図せぬ結果についても懸念を表明した。 「新型コロナウイルス、SARS、HIV、エボラ出血熱、その他の人獣共通感染症は、野生動物を屠殺し食用にすることの危険性を世界に示した」とベイカーは述べた。 さらに、淘汰によって、壊れやすい生態系が崩れることも懸念されている。「どの種も、生態系において重要な役割を果たしているため、これらの動物の殺処分は、バランスを崩し、苦しみを悪化させる可能性がある」とベイカーは付け加えた。