Jクラブの新たな強化方法に? 関塚隆TDが語るJ3福島が川崎や湘南と業務提携を結び、“新米”寺田周平監督を招聘したワケ【インタビュー2】
「本当にポテンシャルがある」
その点では、改めて福島は施設面で足りない部分もある。 練習場にはクラブハウスがなく、シャワーは簡易的なもの。選手たちは提携している一柳閣(温泉宿)で身体を癒し、スポンサーの株式会社ダイオーに協力してもらいながら食事を取っている。 またホームのとうほう・みんなのスタジアムはアクセス面などで課題も抱え、集客に頭を悩ませている。 それでも関塚氏は初めて練習場である十六沼公園天然芝グラウンドに足を運んだ際に感銘を受けたと振り返る。 「グラウンドがすごく良くて驚かされてね。天然芝が2面があって、山に囲まれた、静かな環境で、まさにサッカーに集中できる。成長するために練習に打ち込みたい選手にとっては素晴らしい環境だなって。 それに福島は新幹線で東京から1時間30分ほど、大宮からだったら1時間5分ほどで、アクセスだって悪いわけじゃない。環境的にも本当にポテンシャルがあって、やりようによっては、もっと充実できるなと」 ポテンシャルを秘めているのはスタジアムも同様だろう。関塚氏は最近はアウェーの地でも吸収できることはないか、探す日々であるという。 「アクセスのせいにするだけでなく、やれることってまだまだあると思っていて。アウェー戦で各スタジアムに行くと試合前や、スタジアムの周りなどで楽しんでいる人がいるじゃないですか。 イベントや食べ物のブースが設けられていたり、そういう楽しみがあって、なおかつ試合がある。夢が詰まっているというか、美味しいものや、そこでしか食べられないものなどを楽しんでもらって、試合でも盛り上がって、喜んで帰ってもらう。そうすれば、もっとお客さんが来てくれる場になると思うんですね。 Jリーグスタート時の鹿島でも1万5000人のスタジアムを満員にしようと色んなことを模索していましたからね。そうやってみんなで協力しながらひとつずつ作り上げていった。 川崎では、風変わりなイベントがたくさんあった。それこそファン感謝デーでは川崎競輪場で4番のブルーのヘルメットを被って自転車で走ったりしたからね(笑)。あの時は、ここまでやるのかと思ったけど、斬新だったよね。そうやって知恵を出し合うことも必要なのかなと」 そうした一つひとつの模索がまたクラブの新たなページを作っていくのだろう。 では、テクニカルダイレクターとして、改めてピッチ内でも大事にしていることはどういうことなのか。 第3回に続く ■プロフィール 関塚 隆 せきづか・たかし/1960年10月26日、千葉県生まれ。現役時代は本田技研でFWとしてプレーし、引退後は鹿島でのコーチなどを経て、2004年からは川崎を率い、魅力的なサッカーを展開。その後はロンドン五輪代表、千葉、磐田でも監督を務め、昨年7月から福島のテクニカルダイレクターに就任。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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