バスケ女子日本代表を率いる恩塚亨が最終予選で得た確信(前編)「やり抜くという信念がチームにしっかり刻み込まれている」
「流れの中で一番期待値の高いシュートを選択することにこだわっています」
――OQTで選んだ12名は、3試合を勝ち抜くために特化したメンバーだったと思います。それがオリンピックになると、金メダルを取るには6試合が必要で、さらに相手もどこになるか分からない。そうなると、編成もより柔軟性を持たせたり、プレータイムのシェアをより意識しますか。 ベースはそんなに変わることはないです。強みをいかに最大化して、相手の弱みにぶつけることができるかにこだわっています。例えば、パリの出場チームで日本がフィジカルで優位に立てる相手はいないと見ています。目指すのは自分たちの強みをぶつけることで、相手の弱みが出る場面を増やしていくこと。フルコートで仕掛ける戦いに持っていければ、単純に相手より速く長く動ける強みを出すことができます。自分たちの強みを発揮し続けることで、相手がどんどん弱みを出していかざるをえない。その噛み合わせを見つけていきたいと思います。 プレータイムに関しては、結局はチームの総合力でいかに勝っていくかになります。その中でタイムシェアが目的というより、選手に最高のパフォーマンスを出してもらうために逆算してプレータイムを考えるようにしています。過去の試合から、これくらいの時間なら一番良いパフォーマンスが出せる。これ以上、長くなると少し質が落ちてしまうというのは分析しています。 ――日本の場合、クラッチタイムでこの選手にシュートを任すという明確な絶対的エースはいません。オリンピックでも試合ごとにタッチが良い選手がここ一番でシュートを打てばいいのか、それともエースは作った方が理想的なのか、どのように考えていますか。 結論から言うと決めない方がいいと思っています。クリエイトする役割、スクリーンをかける役割、シュートを打つ役割の選手というベースはありますが、そこに固執することはなく、流れの中で一番期待値の高いシュートを選択することにこだわっています。OQTで2ポイントの成功率は70%近くでしたが、これは点を取る役割はどの選手と限定せずに全員で攻めることができたからこそ。過去には、アタックするのはこの選手と役割が偏ったことで、難しいシュートでも打つ選択が増えてしまって2ポイントの成功率が20%台のこともありました。全員が狙っていく考え方になると思います。 ――今の代表は全員が大きなプレッシャーのかかるしびれる場面でもシュートをちゅうちょなく打ち切る覚悟、タフさを備えていると言えますか。 そうですね。各選手のメンタルの強さに敬意を払っていますし、誰もがここ一番でシュートを打てるようにしていきたいです。結局、今はスカウティングがより進んで、一番期待値の低い選手にボールを回そうと相手もディフェンスをしてきます。それぞれが成長し、ベースの役割がある中でも、チームとして期待値の高いシュートをちゃんと打っていく。みんなが、シュートを打つ責任を担えるマインドセットで試合に臨むことが鍵になってきます。
バスケット・カウント編集部