高齢者は便秘になりやすい! 原因と対策、問題点を介護福祉士に聞く
高齢者が便秘になるとどのような問題が起こるのか 症状と危険性を解説
編集部: 高齢者の便秘症状にはどのようなものがありますか? 佐藤さん: 腹部の膨満感、嘔気、嘔吐、腹痛などです。いきんでも便が出ず、常に残便感があります。便が溜まると体内の消化液やガスが消化管や胃を圧迫するため、腹痛や嘔気、嘔吐を招きます。臭いの強いげっぷが出るのも特徴です。 編集部: 高齢者の便秘は危険ですか? 佐藤さん: 便秘の時にトイレで強くいきむと、血圧が上昇し脳梗塞に発展する危険性があります。ほかには感染症へのリスクが挙げられます。腸のバリア機能が低下し、あらゆる細菌に感染しやすくなるためです。 認知症の方ですと、うまく不快感を訴えられず、落ち着きがなくなったり怒りっぽくなったりといった症状も表れます。 編集部: 高齢者の便秘の合併症にはどのようなものがありますか? 佐藤さん: 腸閉塞、直腸潰瘍、虚血性腸炎などです。腸閉塞はイレウスとも呼ばれ、消化物が腸から肛門へ正常に運ばれなくなる病態をいいます。嘔吐や嘔気、腹痛、おならが出なくなるなどの症状が特徴です。 直腸潰瘍は、直腸内に停滞し続け硬くなった便が、停滞場所を圧迫し続け形成された潰瘍です。虚血性腸炎は、大腸血管の詰まりや血液不足が原因で発症します。急な腹痛や血便、嘔吐などの症状が見られます。
高齢者の便秘対策まとめ 日々の生活習慣を改善し便秘を予防する
編集部: 高齢者の便秘を予防するにはどう対策すればいいでしょうか? 佐藤さん: 気をつけていただきたいのはこちらの5点です。 ・朝食は特にしっかり摂る ・水分はこまめに少しずつ ・適度に運動する ・下剤を使う前に腸内環境を整えよう ・トイレに行く習慣をつける 朝の食事は腸への刺激となり、スムーズな排便につながります。食物繊維を多く摂ってみてください。食物繊維は水分を吸収し、便の量を増やしてくれます。水分は一気に飲まず、1日を通して適量飲むのがおすすめです。 編集部: おすすめの運動方法やトイレの習慣のつけかたについても教えてください。 佐藤さん: 運動量の低下も便秘の原因となるので、その人の身体的レベルに応じた運動を暮らしの中に取り入れてみてください。高齢者は1日の大半を横になったり座ったりしたまま過ごす人も多いので、食事量や筋力だけでなく蠕動運動も低下してしまいます。 ちょっとした散歩でも良いので、運動の時間を設けてみましょう。お腹を優しく円を描くようにマッサージするのもおすすめです。下剤の使用も一手ですが、薬には人によって効きめが弱かったり逆に強過ぎたりする場合があります。 下剤を検討する時は、まず医師に相談し正しく服用していただきたいと思います。また、たとえ便意がなくとも1日の中でトイレに行くリズムを作るのもおすすめです。食後など決まったタイミングでトイレに行く習慣をつけると、便秘の解消につながります。 編集部: 生活面のほかに気をつけるべき点はありますか? 佐藤さん: 便秘の原因となる疾患がある場合は、元を絶つために疾患の治療から始めましょう。処方されている薬が便秘を引き起こしているケースもあるので、まずはかかりつけ医に相談するのをおすすめします。 編集部: 下剤はできるだけ使わない方がいいのでしょうか? 佐藤さん: 効果的ではあります。しかし、体内に便が溜まっていない状態で使用してしまうと、水様便が出たり腹痛を起こしたりして、却って苦痛を感じる場合もあります。 便秘解消のための下剤も、量の調整をしながら上手に活用しなければなりません。使用にあたっては、医師に相談し指示を仰ぐのが安心です。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 佐藤さん: 高齢者は私達よりも食事量や水分量が少なく、日中の動きも活発ではありません。そのため、便秘になる可能性は非常に高いと言えます。便秘になると苦痛を感じるだけでなく、感染症や合併症を引き起こす危険性が高まります。 便秘予防のためには、まず生活習慣を整えるところから始めましょう。もし現在飲んでいるお薬が便秘になりやすいものであれば、かかりつけ医に相談してみるのをおすすめします。