小泉今日子×福岡伸一「“アイドル”と動的平衡」 どんどん壊して、新しくつくり変えていく
福岡 いつもミニスカートを、裾をすごく短くしてはかされていたと何かに書いてありましたね。 小泉 そうです、そうです。お洋服はほとんどおさがりだったんですけど、ただ、姉が着ていた服を私が着たときにもっと似合うようにするにはどうしたらいいかなとか、そんなふうに考えることが多かったです。 両親も、人と同じでいることがいいことだという考えではなかったですね。 ■「アイドルってどういう意味よ?」 福岡 ご両親の影響も大きいのですね。
小泉 そうですね。そういえば、こんなことがありました。 小さいときにすごく流行った筆箱があったんです。人気キャラクターの絵が描いてある筆箱でした。みんなが持っているからすごく欲しくなっちゃって、母に「買って」とお願いしたんです。 そうしたら、母は「どうしてこれが欲しいの?」って訊ねるんです。「だって、みんなが持っててかわいいんだもん」っていったら、今度は「みんなが持っているから欲しいの?」と訊いてくる。
「とにかく、欲しいの!」みたいに答えて、無理やり買ってもらったんですけど、すぐに飽きたんですよ。それで、なるほど、親はそういうことをいっていたんだなと理解して。 それからは自分が心からかわいいと思うものを一生懸命探すようになりました。 福岡 なるほど。 小泉 考えることは子どものころから好きで、例えば、アイドルという仕事についても……。 福岡 15歳からアイドルになったわけですよね。 小泉 はい。でも、アイドルになって少ししたら、「みんな、アイドル、アイドルっていってるけど、ちょっと待って。アイドルってどういう意味よ?」って考えるわけです。
それで、辞書を引くとアイドルの項目には「偶像」って書いてある。今度は「偶像ってどういうこと」みたいな感じで……。 福岡 偶像を破壊すべきだっていうことになったわけだ。 小泉 そうです。アイドルが偶像という意味ならば、アイドルは別に厳密なジャンルではないんだなと。 「アイドルって、かわいいお洋服を着て、こんな感じのポップスを歌って、こんな感じ」みたいなイメージにみんなとらわれすぎてないかと思って。