「M8級の巨大地震」はいつやってくるのか…意外と知らない「地震発生確率」の読み方
2011年3月11日、戦後最大の自然災害となる東日本大震災が発生した。あれから13年、令和6年能登半島地震をはじめ何度も震災が起きている。 【写真】日本人が青ざめる…突然命を奪う大災害「最悪すぎるシミュレーション」 しかしながら、これから起きうる大きな自然災害(首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火)について本当の意味で防災意識を持っている人はどれほどいるだろうか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、10刷ベストセラーの話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)
「地震の発生確率」はどう理解したらよいのか
政府は首都直下地震や南海トラフ巨大地震のように、主要な地震が今後30年以内に発生する確率を公表している。 地震調査や分析、地域防災力の向上、そして何より一人ひとりの備えに活用することを期待したものだ。 では、この発生確率というものはどう理解したらよいのか。
M7級とM8級で異なる発生間隔の幅
地震の発生確率は、過去の活動記録や地質調査などを定量的に分析し、統計的に発生可能性を評価したものだ。 現在の地震学では規模や発生日時を正確に予測することはできないが、「ほぼ同じ場所」で「同じような地震」が繰り返すという仮定のもとに確率を評価して公表されている。 この同じような地震の発生間隔には、本質的に「幅」がある。首都圏で発生するプレートの沈み込みに伴うM7級の地震は時間的に不規則に起きることが知られている。 過去220年間に8回発生したので、平均発生間隔は27.5年だ。この値を使って、30年以内の発生確率が約70%と推定されている。 しかし、この発生間隔は実際には0.3~71年と大きな幅がある。一方、M8級の巨大地震では、発生間隔の幅は、M7級に比べると小さく、次の地震が発生するまでの時間を予測できる。 そのため、M8級の地震では、地震が発生すると次の地震の発生確率は減り、前の地震発生からの経過時間とともに確率が増加していく。この違いは知っておくべきポイントだろう。 たとえば、海溝型地震で代表的な南海トラフ巨大地震は、ユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが年間数センチずつ沈み込む場所で、過去1400年間に約100~150年という間隔で溜まったひずみを解放する大地震が繰り返されている。 直近の1944年の「昭和東南海地震」、1946年の「昭和南海地震」から70年以上が経過しており、発生確率は次第に高まっている。1年ごとにおおよそ1ポイント増加する。 東京大学の平田直名誉教授によると、首都圏ではM8級の巨大地震は約200~数百年の周期で発生しており、関東地震クラスの地震が起きる確率は「今後30年以内にほぼ0~6%」と推定され少ない印象を持つかもしれないが、すでに100年経っており、また起きる可能性は決して少なくないという。 一方、首都圏で発生するプレートの沈み込みに伴うM7級の地震の発生確率は、「今後30年以内に70%」で、この確率は大変高い。 平田名誉教授は「M8クラスの地震は約200年に一度起きる自然現象が、あるときは50年、200年に一度と幅がある。一度あると、しばらく起きないと思うのは願望からくるものだ」としている。 東京において切迫性が高い首都直下地震はM7級だ。さらに、「大地震の発生時期、場所、規模を予め狭い『幅』で知ることは難しい」(平田名誉教授)とされ、このM7級の地震の発生確率を求めるのに使ったのは、東は千葉県銚子市、西は神奈川県小田原市、南は千葉県の房総半島、北は茨城県の霞ケ浦までの南関東全体で起きた地震だという。江戸や東京都心で起きた地震も含まれている。 つづく「『まさか死んでないよな…』ある日突然、日本人を襲う大災害『最悪のシミュレーション』」では、日本でかなりの確率で起こり得る「恐怖の大連動」の全容を具体的なケース・シミュレーションで描き出している。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)