SNSグループでなんでも調達可能! 在日中国人社会で発展を遂げる「独自の経済圏」
「中国政府が厳しいゼロコロナ政策をとったことにより、2022年頃から日本に移住する中国人が増えていますが、彼らは身の安全や資産のリスクヘッジが目的であり、必ずしも日本に特別な思い入れや関心があるわけではありません。かつての中国人は、日本に来たらまず日本の社会に溶け込もうとしましたが、いま日本に移住してくる中国人は、『日本の中国人社会』に溶け込もうとするのです」(中島氏) 日本は近いうえに中国人社会がすでに構築されているため、移住しやすいのだ。富裕層のなかには経営者や投資家だけでなく、香港の芸能人などもいるという。 「多くの日本人が知るある香港スターが日本に移住しているのは、中国人社会では有名な話。彼は『ハイオク満タンお願いします』しか日本語を話せないそうです」(中島氏) ■在日中国人社会で進む多層化 出入国在留管理庁によると、2024年6月末時点での在日中国人の数は84万4187人で、半年間で2万2000人以上も増えている。さまざまなバックグラウンドをもつ中国人が移住してきたことで、在日中国人社会は多層化していると中島氏は言う。 「かつては日本に来るのは、出稼ぎ労働者や一部のエリートが多かったですが、近年は中間層がどんどん増えています」(中島氏) この中間層が、日本人とは感覚が異なるという。 「中国の大手企業では年収2000~3000万円を稼ぐ人がザラです。しかも副業の規模が大きく、不動産をいくつも所有して賃貸で運用しているという人もいます。日本人からしたら富裕層に見えますが、彼らは普通の会社員なのです。 こうした幅広い中間層に加え、富裕層ももっと日本に来るでしょうし、特定技能制度を利用して建設現場や物流業界で働こうという人も増えてくるでしょう。中国の縮図のように、あらゆる階層の中国人が日本で増えていくのです」(中島氏) 米大統領選で勝利したドナルド・トランプ前大統領は、中国製品に対して最大60%の関税を課すことを示唆するなど、中国に対して強硬姿勢を示している。対米ビジネスを展開している中国企業は厳しい状況に置かれるし、米国に留学する学生も減るかもしれない。 となると、緩衝地帯や代替地として日本に進出する企業や学生も出てくるだろう。私たちは、ますます多層化する在日中国人社会とどう共存していくかを考えるべきなのかもしれない。 ●中島恵(なかじま・けい) 山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主に中国や東アジアの社会事情を取材。近著に『日本のなかの中国』(日経プレミアシリーズ)など多数。 文/大橋史彦 写真/photo-ac.com、WeChat