「昨日、占い師になってきたんだ」メンタルヘルスの悪化予防や改善につながる職場体験の”効果”
前回記事「全く異なる仕事体験で得る気づき、従業員のエンゲージメントを高める大人の職業体験とは何か?」では、大人の職業体験が従業員エンゲージメントに与える影響について探りました。 【写真】大人の職場体験の中には「占い師」のような仕事もある 職場を離れ、全く異なる環境で新たな仕事を体験することで、従業員は自身の仕事への向き合い方を見つめ直し、エンゲージメントを高めていく。そんな職業体験の効果を、参加者の生の声とともにお伝えしました。 今回は職業体験のもう一つの重要な効果、メンタルヘルスの改善について掘り下げていきたいと思います。 ストレス社会と言われる現代において、従業員のメンタルヘルスの重要性が叫ばれているのはもはや常識です。心の健康は、従業員のパフォーマンスに直結する要因だからです。 実際、メンタルヘルスの悪化は生産性の低下や欠勤率の上昇など、企業にとって大きな損失をもたらします。厚生労働省の「平成30年労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスを感じている労働者の割合は58.0%にも上っています。 つまり、日本の労働者の約6割が日々ストレスを感じているということ。このストレスが溜まりに溜まると、バーンアウト(燃え尽き症候群)や、うつ病などメンタルヘルスの不調につながります。 WHO(世界保健機関)の報告書では、メンタルヘルスの改善が生産性の向上につながることが示唆されています。つまりメンタルヘルスへの投資は、従業員の幸福度を高めるだけでなく、企業の業績アップにも直結する重要な施策だということです。ここからも、メンタルヘルスとパフォーマンスの密接な関係が見えてきます。 それでは、現状のメンタルヘルス対策にはどんな課題があるのでしょうか。
■ カウンセリングや面接指導とは異なる効果 厚生労働省は、2015年12月から従業員数50人以上の事業所でストレスチェックを義務化しています。もちろん、これはメンタルヘルス対策の重要な一歩ですが、ストレスチェックの実施だけでは不十分で、その結果を踏まえた具体的な対策が求められています。 具体的なメンタルヘルス対策として、高ストレス者には医師の面接指導やカウンセリングの受講を勧めるのが一般的です。ただ、こうした施策の場合、「私、何か問題でもあるのかな?」というネガティブな印象を与えることも多く、カウンセリングを受ける側としては、どうしても利用をためらってしまいます。 一方の企業側もストレスチェックの結果を受けて職場環境の改善につなげていきたいところですが、実際、医師の面談やカウンセリング以外に何をしたら良いのか、困っている面もあるように思います。 しかも、いざ社員が利用したいとなっても、業務量を調整したり、人間関係の改善を図ったりすることはなかなか難しいものです。 その中で、もっとポジティブで誰でも気軽に参加できるような施策ということで、大人の職業体験に関心を寄せられ始めています。 カウンセリングや面接指導とは異なり、職業体験には楽しいイメージがあります。「問題があるから参加しないと」ではなく、「新しい経験を積みたいから」「知らない世界を知りたい!」という前向きな動機づけが生まれるのがポイントです。 また、ストレスチェックの結果に関係なく、誰でも参加できるのが特徴です。高ストレスの人だけでなく、普通のストレスレベルの従業員も、職業体験を通じて心身のリフレッシュやモチベーションアップが図れます。 加えて、職業体験にはメンタルヘルスの3つの予防策にも効果があると感じています。ストレスを生まない職場づくり、不調に陥った従業員を早い段階で不調を把握・発見するための取り組み、実際にメンタルの不調になった従業員の治療と休職後の職場復帰──という3つの予防策です。