40代夫婦、〈月4万7000円〉の米ドル建て終身保険を9年間払い続けるも…老後資金の準備には程遠い「厳しい現実」【保険のプロが解説】
終身保険は「コストの高い貯蓄」がセット
(後田):なるほど。「保障があってお金も増えるのであれば、安くない保険料でも利用する価値がある」と思われた。とはいえ、毎月5万円近い保険料となると、やはり負担が重いと……。 (五十嵐美香):はい。保険料の支払いがきつくなってきています。 (五十嵐有司):だから、後田さんが僕の立場だったら解約すると、おっしゃるわけですか。 (後田):『投資の大原則』(日本経済新聞出版)という本 ── バートン・マルキールとチャールズ・エリスという投資の世界で高名な人たちが書いた本ですが ── その中に、こんな記述があります。 「終身保険はあなたが必要とする生命保険機能に、コストが高い投資プログラムが付け加えられている」 つまり、死亡保障と貯蓄部分がセットになっていて、販売手数料などの諸費用が非常に高い。手数料などが高いと貯蓄に回るお金は少なくなりますから、貯蓄には向かない仕組みです。 (五十嵐有司):「米ドル建てだから有利だ」と言われたんですけどね。 (後田):確かに、日本よりアメリカのほうが金利は高いですから、円建ての商品より、米ドル建ての商品のほうが、ドルベースでのお金の増え方は大きくなります。仮に、定期預金なら、円だと金利が0.1%もあればいいほうなのに、ドルだと5%の商品もあるとか、そういうイメージですよね。 (五十嵐有司):ええ、そうですね。
「米ドル建ては金利が高く、お金が増えやすい」の誤解
(後田):とはいえ、米ドル建ての保険も、解約してお金を使うときは円に換えますよね? (五十嵐有司):はい、そのつもりです。 (後田):そうすると、為替レート次第です。 (五十嵐有司):例えば、20年後に解約するとき、お金が増えているとは限らない。円高だと残念な結果になるということですか。 (後田):はい。円安でお金が増える可能性もありますが、どちらに振れるかはわかりません。今は1ドル140円台だとして、120円になれば、円に換えた金額は15%ほど減り、90円だと35%くらい減るわけです。 (五十嵐美香):さすがに1ドル90円台はないかなぁと思いますけど。 (後田):おっしゃる通り、今の為替レートから大きく離れた数字は想像しづらいですよね。ただ、1982年以降の30年で見ても、1ドル70円台から240円台まで、3倍くらいの振れ幅があるんですよ。2022年など、1月から10月までの間に110円台から150円まで動きました(図表)。 (五十嵐有司):思ったより動くんですね。為替レート。 (後田):はい。ですから、「米ドル建てだと金利が高いので、お金が増えやすい」というのは、あくまでドルベースの話であって、円に換える前提であれば、「成果は為替の影響が大きく、あてにならない」と見るのが無難なはずです。 (五十嵐美香):なんだか残念です。 後田 亨 オフィスバトン 「保険相談室」代表
後田 亨
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