東洋⼤「学力試験型」推薦⼊試の衝撃、本当の論点 学生にとっても現状の仕組みはベストではない
2万人が殺到!「基礎学力テスト型」推薦入試にニーズあり
東洋⼤学が12月に実施した学力テストのみで合否を判断する推薦入試が波紋を広げている。「ルール違反だ!」「関西の大学では慣習的に行われていた」「文科省も今さらなぜ指摘?」などなど……さまざまな意見が上がっている。そんな中、「現状の仕組みは、必ずしも学生達にとってベストではないのではないか」と話すのは高大連携に詳しい倉部史記氏だ。得点だけの年明け入試と、学力軽視の年内入試のままでよいのか。とくに年内入試のあり方については高大でもっと議論すべきと指摘する倉部氏に解説してもらった。 【まとめを見る】関西で「公募型の学力試験による推薦入試」を行っている私大の例 東洋大学が新しく始めた学校推薦型選抜「学校推薦入試・基礎学力テスト型」が議論を呼んでいます。面接や小論文などは実施せず、試験科目は学力テストのみ。高校の調査書および学校長推薦書は必要ですが、他大学と併願も可能です。 結果として、600人弱の募集定員に対して2万人弱の志願者が集まる人気ぶり。大東文化大学も、今回から同様の入試を始めました。 2024年度の大学入学者を見ると、私大入学者の40.3%が学校推薦型選抜、19.0%が総合型選抜での入学者と、いわゆる年内入試での合格者が過半数を占めています。早くに進路を決めたいというニーズが受験生の側にあるのは間違いありません。 ですが年内入試は、面接や志望理由書などに向けた特別な指導が必要になるなど、高校側にとっては負担の大きいもの。早期に合格を決めた生徒が日々の学習をおろそかにしてしまうことも、高校教員が心配する点です。東洋大学の新入試が人気を博しているのも、こうしたニーズをうまく汲み取る設計だからなのでしょう。
現行の入試ルールに反している?反していない?
一方で、「大学入試のルール違反なのでは」という声も上がっています。入試において学力試験を行う場合は「2月1日から3月25日まで」の間に行うよう、文科省「令和7年度大学入学者選抜実施要項」は求めています。 これは大学や高校の関係団体が参加する大学入学者選抜協議会によってまとめられ、文部科学省によって公表されているルール。学力試験の早期化が進むと受験生の側がその対策に追われることになり、高校教育に好ましくない影響を及ぼしかねない、という懸念が背景にはあります。 実際には、学校推薦型や総合型の選抜でも、進学後の基礎学力の検査はしばしば行われています。大学教育を受けるために必要な知識・技能などを評価するため、大学入学共通テストや各教科・科目に係るテストなども活用するようにと、大学入学者選抜実施要項にも記載されています。 ただ、その場合も、高校での成績や実績、あるいはプレゼンや面接等なども含めた総合的な評価の1つとして学力検査を位置づけるケースがほとんど。今回の新入試では、学力検査しか行われませんので、実質的に一般選抜の前倒しではないか、という点が論点になっているわけです。