「ネット選挙」旋風が吹き荒れた2024年 迎える25年は「大化の改新」と同じ干支、千年に一度の〝大政変〟の年に?
【ニュース裏表 安積明子】 2024年の干支にあたる甲辰(きのえたつ)は、「太陽に照らされ、急激な成長と変化が起こる年」とされる。確かに、政治では大きな変革が発生した。 【年代別でみる】石破内閣を「支持する」が「支持しない」を上回った唯一の年代は? 9月の自民党総裁選で、石破茂氏が決選投票で逆転勝利して石破政権が成立したが、翌月の衆院選で自公与党は過半数割れの惨敗を喫した。 代わりに、国民民主党やれいわ新選組、日本保守党などが躍進したが、背景にあるのが「選挙のネット化」といえよう。 4月の衆院東京15区補選では、「つばさの党」が大暴れした。新興政党の乱立や、選挙の混乱が指摘されるが、動画配信の「収益化」が一因ともされる。インパクトのある騒ぎが起きれば、視聴回数が増え、配信者の懐に広告収入が入る仕組みになっていた。 7月の東京都知事選も、広島県安芸高田市長時代に議会側とやり合う姿が注目された石丸伸二氏が多くの切り抜き動画でネット上で大いにバズり(話題になり)、165万8363票で2位となった。 国民民主党も、早くからネットを政治に導入してきた。動画配信の頻度では、役員の〝ぶら下がり〟も中継する日本維新の会に及ばなかったが、榛葉賀津也幹事長の記者会見の配信動画の再生数では、他党の追従を許さなかった。 衆院選前に、玉木雄一郎代表が石丸氏と動画で対談し、最終日に石丸氏が国民民主党のマイク納めに飛び入り参加したことも、話題になった。 一方で、与党はネットをうまく使いこなせたとはいえない。自民党はホームページで石破首相らの選挙日程を公表したが、演説現場に「配信者」の姿は見当たらなかった。これでは拡散のしようがない。 11月の兵庫県知事選は、ネット選挙の〝功罪〟が浮き彫りになった。県議会の全会一致で不信任とされた斎藤元彦知事が再選されたが、期日前投票は94万4541人で、過去最多を更新するなど、県民の関心の深さがうかがえた。 だが、中傷やデマ、街頭演説への妨害などが多発した。これで選挙行動がゆがめられたのなら「民主主義の危機」といえる。 迎える25年の干支は乙巳(きのとみ)だ。1380年前の乙巳にあたる645年は、「大化の改新」という大政変が始まった。中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我入鹿らを暗殺し、豪族中心の政治が「天皇中心の政治」に移行した。701年に「大宝律令」の法体系が制定されたことで、変革は完成を見た。
古(いにしえ)の日本で、実に60年近くの時を要して政治改革が行われたわけだが、ネット選挙への移行も、こうした大変革に匹敵するものかもしれない。民主主義のあり方が、大きく変化しようとしている。 (政治ジャーナリスト)