黒田サプライズはないのか? 日銀会合「総括的検証」を総括的に予想する
物価目標達成「2年」を放棄するのか?
Q:「量」・「質」・「金利」という3次元に加えて「4次元」が発動される可能性は? A:外債購入が「4次元」として考えられるが、周知のとおりそのハードルは高く、今回のタイミングでは極めて考えにくい。ちなみに「4次元」には該当しないが、社債購入が拡大されるとの観測報道があり、それ自体はあっても全く不思議ではない。ただし、日本は米国と比較して社債市場の規模が小さいほか、低格付け企業が発行するハイ・イールド債市場が未発達なこともあり、社債発行は財務健全性に優れた企業、すなわち、元から低金利での資金調達が容易な企業が中心になっている。そのため効果は小さい。 Q:「2年」の目標が放棄されるとの観測があるが。 A: そもそも日銀が物価目標達成のターゲットとしているのは、あくまで「できるだけ早期」。「2年で2%」というフレーズをよく聞くが、「2年程度の期間を念頭に置いて」という文言は2013年4月の声明文に一度だけ登場したのみで、それ以降は触れられていない。量的・質的金融緩和の導入からすでに3年半が経過しているので、いまさら「2年」が意味のある数字とは思えない。ただし、これまで物価目標達成時期は(その時々の予想時点を起点に)概ね2年以内が示されてきたので、人々は2年が目標であると理解しているし、そう理解するのが極めて自然。「総括的検証」では、原油価格の不透明感を主因に、2年以内の物価目標達成が難しいとの認識が示される可能性がある。その場合、「2年を放棄」と解釈されるだろう。 Q:「サプライズ型」から「予告型」への変更は? A:大いに考えられる。黒田総裁がこの6月に「政策の予見性可能性」を重視する構えを見せたことから明らかなとおり、すでに「サプライズ型」の情報発信を修正し始めている。「総括的検証」ではサプライズ型の政策変更が、将来の金融政策の不透明感を高めたとの反省が盛り込まれる可能性がある。今後は、ECBドラギ総裁が用いている戦術、すなわち総裁会見で次回会合の政策変更を強く示唆するという手法が採用されるのではないか。なお、こうした視点は筆者が9月会合で追加緩和がないと予想する有力な根拠の一つである。14日付の日経新聞朝刊が1面で報じたよう、先々のマイナス金利深掘りの可能性があるのは事実だが、その場合、事前に何らかのシグナルが発せられる可能性が高いだろう。