華優希、宝塚に導いてくれたシェイクスピアの作品で難役挑戦 父親役・草なぎ剛の優しさに感謝
◆初舞台から10年 ロンドンでの舞台経験は大きな財産に
――2014年の初舞台から10年が経ちました。振り返ると、この10年はどんな日々でしたか? 華:宝塚にいた約7年は短距離走をしているみたいな、ずっと走っているような感覚でした。落ち着いて物事を考えられないくらい、目まぐるしく走り続けていました。でもそれが青春でもあり、とにかく宝塚が好きだったから走り続けられた時間だったなと思いますし、その時間は何にも代えがたい、人生の中でも特に大事な時間だったなと思います。 そこから切り替わっての3年は、物理的に時間もできましたしいろんなことを考えながら、新しい出会いがたくさんあって、新しい世界も広がって。この7年と3年はまた全然違うんですけど、どちらも同じくらい濃密な時間だったなと思います。 ――その中でターニングポイントを挙げるとすると? 華:ターニングポイントになったなという年があるんです。その年は、初めて新人公演のヒロインをさせていただいて、また『はいからさんが通る』でヒロインも務めさせていただき、その年の後半には『ポーの一族』という作品でトップさんの付近でお芝居をさせていただくという、自分を取り巻くものが変わったなと感じた1年でした。それまでとそれ以降でいろんなものが変化し、責任も大きくなったといいますか。それまでもすごい速度で自分では走っていたつもりでしたけども、より責任が増えた感覚がありました。 トップ娘役に就任させていただいてからもさらに責任は増えましたが、『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』という作品との出会いでは、型にとらわれない「こういうお芝居をしていいんだ!」と体感することができました。そこからひとつ、お芝居に対する概念が変わったなという思いがあります。 ――今年は『千と千尋の神隠し』でロンドン公演も経験されました。 華:圧巻でした。海外のお客様は感情を表に出してくださるので、それが単純にうれしかったですし、こんなに日本の文化や『千と千尋の神隠し』という作品が海外で愛されているんだと肌で感じられたのもすごくうれしくて。やりがいも感じましたし、とても貴重な財産になったなと思います。 ――ロンドン生活も満喫できましたか? 華:とっても楽しかったです!(笑) 仕事で行けたのが大きいなとも思います。プライベートで行ってももちろん楽しかったと思いますけど、現地の人と働いて、暮らして、それってすごく大きなことだったなと思います。向こうでは演劇がさらに生活に溶け込んでいて、劇場も生活の一部になっている。そういうのを人から聞いた話で感じるよりも、自分が行って働いて、こういう感覚なんだと感じられたことがすごく大きかったです。舞台の板の上は聖地だとも感じていますが、舞台というものを、もっと身近に感じてもいいんだなと、自分と舞台との距離感が新しくなった感じがします。 ――今回、『はいからさんが通る』での紅緒さん以来の日本青年館ホール。ほか、故郷・京都での公演もあります。初の凱旋ですね! 華:凱旋になるか分からないですが、すごくうれしくって!(笑) 御園座も『千と千尋の神隠し』でお世話になりましたし、どの劇場も思い入れがあるので、楽しみにしています。 本当にすてきな言葉がたくさん散りばめられた作品なので、皆様によりよい作品としてお届けできるように頑張りますので、ぜひ楽しみにして劇場に足をお運びいただけたらうれしいです。 (取材・文:田中ハルマ 写真:松林満美) 舞台『ヴェニスの商人』は、東京・日本青年館ホールにて12月6日~22日、京都・京都劇場にて12月26日~29日、愛知・御園座にて2025年1月6日~10日上演。