障がい者の“母”、緊急搬送されるも「子どもの介護をしないといけないから、手術を受けるわけには」…知られざる「障がい者支援の実情」
障がいと聞くと、いわゆる健常者の人々にとっては身近に感じられなかったり、自分の人生とは無縁に思えたりすることもあるでしょう。訪問看護ステーションを経営する龍田章一氏も、16歳で交通事故に遭うまで、自身が車いす生活になるとは思いも寄らなかったといいます。不慮の事故などにより障がいを負う可能性はゼロではありません。また、日本の障がい者人口の年々増加傾向にあります。誰もが住みやすい社会を構築するには、国民一人一人の認識や理解を変えることが大切です。知られざる障がい者支援の現場。そこで起こっている問題について、龍田氏が解説します。
施設入所できるのはごくわずか…障がい者支援サービスの現状
我が国では、障がい者を「身体障害、知的障害又は精神障害があるため、継続的に日常 生活又は社会生活に相当な制限を受ける者」と定義しており、障がい福祉サービスを利用するには、身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者手帳の取得が必要です。 我が国において、在宅生活を送っている身体障がい者は、428万7千人、知的障がい者は、96万2千人、精神障がい者は389万1千人です。また、施設入所を行っている身体障がい者は、7.3万人、知的障がい者は13.2万人、精神障がい者は30.2万人です(内閣府ウェブサイト『参考資料 障がい者の状況』〔https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r04hakusho/zenbun/siryo_01.html〕)。 障がい者支援を行っている業種は、相談支援専門員、介護スタッフ、管理栄養士、看護師、医師など多岐にわたります。この中で、障がい者のケアマネジメントを行っているのが、相談支援専門員です。 相談支援専門員は、あらゆるサービスの調整を行いますが、施設入所の相談、医療的ケアのある方の施設入所や日中の活動場所になると限りなく調整に難航します。 理由として、障がい者支援施設は各市町村に1つ(50床)しかないことが多く、受け入れの枠が少ない現状が挙げられます。その中で、緊急性が高い方を優先的に入所させる方針を取っているため、施設入所の相談を行っていたとしても、いつ自分の順番が回ってくるのかが不透明な状況です。 緊急性がある場合でも、近隣の障がい者支援施設に入所できる可能性があるかどうかも不透明です。私も相談支援専門員だった頃に、施設入所の調整を行うことがありました。その際、ご家族には「近場から探しますが、県外になる可能性もあります」と説明していました。