今払っている「年金保険料」は運用されている? 私たちが年金を受給する20年後には、年金額はかなり増えるのでしょうか?
昨今は老後2000万円問題の話題や、iDeCoやNISAなどといった資産形成の仕組みの認知度が高まり、老後の準備を意識する人も多いと思います。 しかし、以前は「公的年金を信用しない」という声を聞くことも少なくありませんでした。実際のところ、現在の年金の運用状況はどうなっているのでしょうか。
年金の運用・管理はGPIFが担う
現在、日本の公的年金の運用や管理は、外部組織の「年金積立金管理運用独立行政法人(以下、GPIF)」が行っています。GPIFは年金保険料として国に納付された年金積立金を寄託され、運用や管理を行っている組織です。 一定の方針のもとに運用を行い、年金の財源の安定を図っています。現在のGPIFの運用状況などは、ホームページでも確認できます。2022年度の業務概況書を見ると、GPIFの1年間の運用収益は2兆9536億円、収益率は年率1.50%と、単年ではプラスとなっています。 2021年度末の運用資産額は196兆5926億円でしたが、2022年度末の運用資産額は200兆1328億円と3兆5402億円増えています。運用資産額のうち国から寄託された金額は1兆77億円、年金原資として国に納付した額(年金特別会計)は3800億円と、収入が多くなっています。 現在の運用状況から見るに、国が年金原資を取り崩しているというより、むしろ年金原資が増えている状態になっています。 GPIFが年金の管理運用を始めた2001年から2022年度までの21年間の運用利回りを見ると、年率3.59%となっています。1年ごとでみるとマイナスとなる年もありますが、「投資は長期が基本」といわれるように、長期で投資することで、運用実績が上がっていることも分かります。
年金は「運用次第で支給される額が決まる」というものではない
公的年金はGPIFが運用し、安定を図っていると説明しましたが、実際の年金額は運用次第で増減するわけではありません。第1号被保険者が受け取る老齢基礎年金(令和5年度の満額で79万5000円)は納付期間に応じて支給され、会社員などの第2号被保険者が受け取る老齢厚生年金は収入に応じて支給されています。 年金が好調に運用され、支給額等の支出を賄うことができれば、年金原資は減っていかないことになります。前述の「業務概況」にもあったとおり、年金保険料として寄託された金額より、年金原資とするために国に納付した金額が少なくなっていることから、年金原資は増えているといえます。 図表1はGPIFの「管理・運用状況」のページで確認できる、過去の年間の運用利率の推移(青線)と、2012年を100としたときの運用実績の指数(赤線)になります。